M家の小人2



 ハリー・ポッター……僕の国は外とまったく関わりがなかったから全然影響がなくて、マルフォイ家にお世話になり始めてから知った名前だ。名前を言ってはいけないなんとかっていう人を殺した英雄なんだって言うけど、この文化では殺人って罪じゃないのかな? 殺したら英雄だなんて。それともあれかな? 赤ん坊なのにその誰だかを殺すくらい力が強いことを言っているのかな? 『いぶんかこーりゅー』は難しい。で、そのハリー・ポッターだかが坊ちゃんと同学年で入学するせいで、今年の新入生は例年のそれよりも余計注目されているみたいだ。上学年のみんながみんなこっちを振り返っていて、奇異を見る目を向けてくるのだ。坊ちゃんはかわいそうに顔を真っ青にしていらっしゃる。


「大丈夫ですよ、坊ちゃん」


 組み分け帽子が韻を踏んではいるものの突っ込みどころの多い曲を披露した後、アルファベット順に新入生が呼ばれていく。マルフォイ家はM。呼ばれるまでに時間があるから生殺し状態がこのまましばらく続く坊ちゃんのことを考えると、僕は泣きそうになってしまう。かわいそうな坊ちゃん! あのひげ面の老人がニヤニヤと笑っている顔を見て、旦那様の言葉がよみがえる。

 あれはつい昨日のことだ、坊ちゃまが就寝なさったあと、


「良いか、××。けっしてあの校長に気を許すな」

「はい、旦那様。ですが――どうしてですか?」

「あの校長は我々純血の解体を狙っているのだ。校長といゆ立場を悪用し、誇り高き純血をマグル共めのいる底辺へ引きずりおろそうとしている」


 旦那様は苦々しそうにそう仰り、僕はなんとと悲鳴を上げた。まさか、そんな悪行をする教師がいるとは! それも校長というからには学校で一番偉い人なはず。


「マグルとは、僕を黒い箱を持って追いかけ、魔法を使うためじゃないおかしな杖を振り回していた者たちのことですよね? なぜそんな、恐ろしいことを!」

「その通りだ、××。奴はマグルびいきで、マグル共を使って我々の権利を奪おうとしている」


 恐ろしい……坊ちゃまには近づかせないようにしなければ!


「××、ドラコを守れ。あの爺めの魔手からドラコを守る盾となるのだ」

「もちろんでございます、旦那様!」


 僕は一も二もなく頷いた。旦那様は理事とはいえ学校に何度も顔を出すことはできない。ならば僕以外の誰が坊ちゃんを守るというのだ!

 僕はフォッフォと笑う校長をじっくりと見つめる。この老人が、旦那様の――坊ちゃんの敵なのだ!

 心の中で頑張るぞと闘志を燃やしていると、ついに坊ちゃんの名前が呼ばれた。坊ちゃんは気を奮い立たせ前を向くと、しっかりとした足取りで組み分け帽子の置かれた椅子へ向かわれた。坊ちゃん、旦那様の代わりにも慣れない僕ですが、応援しています!

 スリザリンと決まった坊ちゃんの晴れやかな笑顔を僕はこっそりと写真に収めた。あとで旦那様に送らなくっちゃ。














+++++++++

 純粋なゆえに頑張ります! こんなピュアな闇の陣営がいても良いじゃない?
05.11/2011

- 244/511 -
*前目次次#

レビュー・0件


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -