風紀委員長になったら9
綱吉が来なくなった。学校に、というわけじゃない、ただ応接室に来なくなった。一体どうしたのかと思い教師に報告させたところ、ここしばらく――応接室に来なくなってからも――は授業態度もまじめで成績も上がり、体力的な問題から体育の成績は相変わらず振わないものの学業面では優秀であるらしい。真面目に頑張るせいでここに来る時間が取れなくなったのかもしれないし、そう気にすることでもないだろう。
と、思っていたのが数カ月前か。綱吉がフェードアウトして多少の寂しさを覚えはしたものの、僕にはきょうやがいるからね……寂しいなんて言うわけないじゃないか。
「待って、ここは風紀委員室なんだよ!」
「へー、でも小僧は空き部屋だって言っただろ?」
「いや、だからっ!」
「大丈夫ですって十代目! 風紀委員なんてオレがノしてやりますから!」
「そんなのいらないんだってば!」
久しぶりに聞く綱吉の声。ああ、今日はあの日か――秘密基地制作の日。綱吉も可哀想に、理不尽な家庭教師のせいで気苦労をかけられっぱなしだろう。
「誰? やけに堂々とした侵入者だね」
先ずは行ってきたのは獄寺隼人。歩きタバコはいけませんってママに習わなかったのかな――ああ、いないんだったね、そういえば。
「タバコは――消せ。君の肺がどれだけ薄汚れようと僕には関係ないけど、副流煙で人を巻き込まないで欲しいね」
トンファーで先端だけを擦り火を消す。獄寺隼人の顔が一気に険しくなった。
「んだっ、テメェ!」
「獄寺君止めて、雲雀さんの言う通りなんだから!」
「いーえ、こんな野郎はオレがここで果たします!」
縋りつく綱吉を退け、獄寺隼人はダイナマイトを取り出す。室内でダイナマイトなんて爆発させて、自分や自分の主にまで被害が及ぶと思わないんだろうか? この馬鹿には教育的指導だね。
「五月蠅いよ君。飼い主の命令も聞けない駄犬がキャンキャン騒ぐんじゃない」
踏みこんでトンファーを叩きこむ。脳震盪を起こしたんだろう、獄寺隼人は簡単に沈んだ。弱いね……それでも本当にストリートでやって来た人間なの?
「ちょーっとこれは頂けないのなー。雲雀、だっけか」
「不法侵入及び未成年者喫煙、私刑だけで済ませてあげようっていうのだから優しいと思うんだけど」
本当に、この年齢の子供は自分勝手で困る。リアル厨二病とか黒歴史過ぎるよ。
「っと!」
トンファーを振り山本武の腹を狙うが、動体視力と身体能力故か手加減した攻撃は簡単に避けられてしまった。
「普通ならこれで沈んでるところだよ、君。磨けば強くなるね」
ちょっとワクワクする。今のうちから時雨蒼燕流を学ばないものか――現状なら山本武が一番の優良株だね。
「ははっ、そうかよ!」
「ああ、だから今は――沈みなよ」
手加減はしているものの一般人向けの弱さではなく了平とスパーリングする時くらいに加減して殴りつければ、山本武は避けられず吹き飛んだ。
「ひっ、雲雀……さん!」
「久しぶり綱吉。飼い主ならもっと手綱を締めなきゃいけないよ。特にこの駄犬はいただけないね」
「う、あ、はい。止めます」
綱吉は肩を縮め申し訳なさそうに頭を垂れた。
「ちゃんと頑張ってるってね、教師に聞いたよ」
気絶した獄寺隼人と山本武を蹴り飛ばして横にどけ、綱吉の頭をポンポンと撫でる。
「またいつでもおいで。待ってるから」
僕がそういうと綱吉はガバリと顔を上げた。
「い、良いんですか!?」
「もちろん」
綱吉ははにかみ笑いをし頭を掻いた。ほのぼのとした空気が流れ、窓際にリボーンが座っているのを見つけてちょっと笑ってしまった。その煙幕、用意しただけで終わったね。
+++++++++ なつかしや^^時間軸盛大に飛びました。 04.04.2011
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