電話一本ですぐ参ります



 なんで。オレは真っ当な、いや、半分くらい裏のお仕事にも足を突っ込んでるけど犯罪だけはせずに過して来た。暗殺依頼なんてシャットアウトしたし盗むのだって被害者のものを取り返すためにしかしなかった。至極真っ当に生きて、至極平凡に生活して、いた、のに。


「これはどういうことだ」

「どういうことだ、とは白々しい」


 ブラックスーツの男たちに囲まれ、後ろ手に縛り上げられた状態のオレはそいつらを見上げることになった。見るからに筋肉だ。あの腕、競輪選手の足より太いぞ。


「オークションの商品が全て、全てだ! 盗まれた。身に覚えがあるだろう……? 幻影旅団!」

「どこに隠した、言え!」

「幻影旅団め!」


 ま、またあんたか、またあんたなのか、兄貴。


「オレは幻影旅団じゃない。オレは何でも屋のキース・ルシフェルだ」

「はっ、そのキース・ルシフェルが幻影旅団の団長の仮の姿だって証拠はそろってんだよ!」

「……は?」


 なんでだ。オレはオレで兄貴は兄貴だろ? 何でオレと兄貴が同一人物扱いされなきゃいけないわけ。証拠が監視カメラの画像に残ってるってオイ、それは顔が同じってだけだろ。なんでだよ、また兄貴のせいでオレの仕事がパアとか本当に止めてくれよ。

 あー、兄貴のこと考えてたら苛々してきた。漫画で読んでる時はクロロかっけーとか思ってたけど、弟になりたいとは全く思ってなかったっての。本当にあり得ない、なんで死んだと思ったら生まれ変わってんだよ。あー、ったく、苛々する!


「うっ」

「ぐうぅっ」


 ぐるぐるそんなことを考えてたら何故か黒服の人たちが倒れ出した。え、何? もしかして兄貴? どこにいるのか知らないけど遠距離で気絶させるなんてすげー能力だな……今度は誰からパクったんだろうな。


「でたしぶあぐしけつりんぱ、だいたんすいちょう12312312――フンッ」


 拘束なんてうしとらの鎌鼬で切ればすぐに解ける。これが便利すぎて重宝してるんだけど服がボロボロになるのが難点。今は手首から伸ばしたから服が無事だけど、普段なら背中から生やしたりとか腹から生やしたりとかして――服が無残な姿になる。腰にさしっぱなしのステッキを持ち、くるりと回して恰好を付けてみた。――いや、オレには似合わないってこと良く分ってるから。オレだって自覚してますから、自分の顔の残念さくらい。

 手首をスナップして十メートルくらい頭上にある天井に糸を貼り付けて、扉とは逆に走って壁を登り振り子のように宙を滑って扉を蹴破った。ついでにこれはスパイダーマン。大砲でも撃ったような音が響く中、オレは勢いのまま壁を蹴破って脱出した。下でオレを見上げてくる奴等がいたけど飛び道具系の発を持っている奴がいなかったのか攻撃されることがなかった。――兄貴が助けに来てくれたんじゃなかったのか? なんか皆さん元気いっぱいみたいだけど。どうしてあいつらだけが気絶したんだろうなぁ……分んねぇ。

 と、このままじゃ地面に落ちるから結界作ってその上に着地した。これは結界師な。


「あー……テクマクマヤコンテクマクマヤコン、レッドフィールド大佐になーれっと」


 有名過ぎて誰もが知ってる変身の呪文を唱えていかにもな軍人の姿に変わるとそのまま結界を解いて落下した。あいつらが探してるのはクロロ似のオレだからな。え、レッドフィールド大佐は誰だって? マスラヲに出てくる素敵な傭兵だ。西洋系の顔が多いヨークシンで黒髪黒目は目立つからな。それにこの屋敷に傭兵が雇われててもおかしくないだろうし。ただこの姿でステッキ持ってると違和感があり過ぎるから警棒に変える。

 ちょうど良く物陰に着地したから堂々とその場を後に――しようと、したんだ。


「助けてくれー! うわあああああ!」

「ギャー!!」

「幻影旅団だ、げ――」


 うん?


「キースはどこだ、キースを出せ……キース、キース、キース……」

「団長落ちつけ、キースの実力は分ってるだろう」

「そうね。キースならとくに逃げてるね」


 マチとフェイタンの声までする。仕方ないからオレはそっちに走った。おい傭兵共、お前らここに雇われてるんじゃなかったのか? ちょっとは戦えよ。いや――命大事に、か。


「兄貴」


 レッドフィールド大佐は兄貴よりも背が高い。兄貴が低いというよりは大佐がデカい。もちろんウボォーやフランクリンと比べると低いけどな。


「キースか……?」

「ああ。――兄貴、一体何をしたんだ? 兄貴と勘違いされて捕まったんだけど」

「何をした、か。占い姫の能力を頂いただけだがな。まだ」

「久しぶり、キース。見違えたな」

「ささと元の姿戻るね。見下ろすないよ」


 笑いを噛み殺しながら言うマチに足を蹴って来るフェイタン。ここで変身解けってあんた、『キース・ルシフェル』と幻影旅団が関係者ですって触れまわれと言ってるようなもんだろ。――だがフェイタンはオレの足を蹴り続けている。どんだけ見下ろされるのが嫌いなんだ。


「分った、分ったからフェイタン。蹴るのは止めてくれ」


 地味に痛い。


「でたしぶあぐしけつりんぱ、だいたんすいちょう12312312。ドロンと」


 ついでに唱えてるのはアレだ、実は消化液の覚え方なんだが呪文を考えるのが面倒だったから呪文に転用させてもらった。水兵リーベでも良かったかもしれないと思うが今のところ変える予定はない。縦読みバージョンは大声で唱えるには問題があるから論外だし。

 フェイタンよりも背の低いキャラと言ってもそうそう思いつくレパートリーなんてないから、年下のアジア系のキャラ――ツナで良いか。


「それで良いね」


 ふん、と満足そうに鼻を鳴らすフェイタンをマチは呆れかえった顔で見ている。兄貴は――ガシッとオレの脇に手を差し込むと、オレを持ち上げて高い高いと上げたり下げたりしだした。何なんだ一体。


「キースが十歳の頃を思い出すな……」


 そう言ってオレを腕にのせると、もう用はないとばかりにその場を蹴った。――助けに来てくれたらしいことは分るけど、兄貴が監視カメラに映ったせいでこうなったってことを分って欲しいもんだ。










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 僕がテンプレの能力『漫画・アニメの能力を自在に使える』を持たせるとこんなことになります。こんなのでもOK?
12/11.2010

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