いろはにほへと
裏ページで連載しようかと思ってる、元就×幸松丸(元就の甥っ子)話。の、導入一話。↓スクロールしてね!
毛利元就って国主じゃなかったっけ、確か。三本の矢が折れないことから三人協力し長男を盛りたてていくんだよと教えた(と後から徳川家康に創作された)はずだ。だから国主のはずだ。世界史専攻だから全然自信ないけど。
なのに何でだろう、オレが国主とか本当にあり得ない。引き籠っていたい。坊さんになって平和な余生を過ごしたい。目の前で家臣の一人を采配で殴ってる毛利元就とか言う聞き覚えのある名前の主なんてきっと何かの間違いだ。あの人がオレの部下だなんて間違いだ。
「幸松丸様」
「へ、ふぁい!」
現実から目を逸らして考え事をしてたから、突然呼ばれたのにビックリした。いきなり何? オレに関係あること!?
「この駒の処分、我に任せられよ。なに、幸松丸様のお気になさることではありませぬ故」
「う、うん。分った。叔父上にお任せします」
「ここは『任せる』と一言おっしゃれば良い」
「ま、任せる」
家臣には氷の彫像みたいな無表情しか向けないのに、どうしてだろう、オレに向けられる叔父上の顔はいつも笑顔だ。逆にそれが怖くて叔父上には逆らえない……。
「この塵を連れて行け」
「ひっ!! お許しください、命だけは――命だけは!」
「煩い」
采配がその人の顔を打って、とっても痛そうな音がした。命だけはって言うことは……斬首……? 聞こえない聞こえない、オレには何にも聞こえない。顔から血の気が引く。イヤン叔父上マジ怖い。
「幸松丸様のお耳を汚すなど、あの塵虫が……。自らの分もわきまえず」
何か叔父上が低く唸った。一体なんて言ったのかは知らないけど不穏な空気は分る。本当に怖いから止めて欲しい。そしてくるりと振り返った叔父上はにっこりと笑んでオレの前に膝を突いた。
「さあ、幸松丸様、奥へ行ってこの元就と魚魚合わせをしましょうか」
「う、うん」
魚魚合わせっていうのは魚の絵を完成させる遊びで、だいたいどれがどれとペアなのか見れば分るカルタみたいなものだ。本当は平成の世で出来たものなんだけど、オレが持ち込んだら爆発的に人気が出て――あとは言わずもがな。(魚魚は「とと」と読み、また本来は魚偏に魚と書くのですがPCでは出てくれない)
「あっ」
そして何でか知らないけど、毎回叔父上はオレを抱き上げて運ぶ。脇に手を差し込まれて抱っこだ。もうオレ八歳なのに……! いや、数え年でだから七歳だけどさ。精神は成熟してるのに何この羞恥プレー。恥ずかしくて人の顔を見れないからいつも叔父上の肩に顔を埋めるんだけどね! ああ人の視線が痛い!
「こ、幸松丸様……!」
そしていつものことだけど叔父上がなんか感極まったと言わんばかりの声を出してオレを抱く腕を強めるんだけど、理由がさっぱり分んないからもうオレってばどうすれば良いの。叔父上が何をしたいのか何に喜んでるのか分んないから。最近叔父上の視線が妙に痛いから。最近鳥肌が立つことが多いけど、その原因は冬の寒さじゃなくて叔父上の視線だからね?
――うん、はっきり言おう。オレは叔父上が貞操面で怖い。わざと目を背けてきたけどだんだん逃げられなくなってきた気がする。オレ、そのうち叔父上に美味しく頂かれちゃう。絶対。
オレ、守れるんだろうか? お尻。
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裏に置くとは、つまりそういうことです。 12/09.2010
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