いらはいtoコナン



 ここが名探偵コナンの世界だと気付いたのは、娘が連れてきた幼稚園のお友達の名前が工藤新一だと知った時だ。英理が心配するほどうろたえてしまったのは仕方ないと思う。だって私はコナンのファンではなかったからアニメを思い出したら見る程度だったし、毛利探偵事務所に英理の姿がないことは覚えていたからだ。離婚――はありえない。英理に私が愛想を尽かすはずがない。いやもしかしたら英理が私に愛想を尽かすのか? そんな、恐ろしい……! それにどうして私が探偵になっているのだか。私は刑事であって探偵になるつもりなんてさっぱりない。……ないと思っていたのに、英理とは別居することになり現在の私の職業は探偵だったりする。なんでだ。


「おい、工藤新一」

「な、何だよおっちゃん」

「お前には、ぜぇったい、蘭はやらんからな! 蘭が欲しければ私を倒してから言え!」


 中高生で色気づくなど全く最近の子供は早熟だ、なんて言葉で済まそうとは思えない。中学生高校生はプラトニックラブだ馬鹿者。お父さんは許さないからな!

 蘭に誘われて事務所に遊びに来ていた工藤新一に指を突き付けて言えば蘭が「お父さんってば!!」と私の指をへし折らんばかりに曲げた。い、痛いじゃないか蘭! 私は蘭のためを思って……!


「蘭、考え直してくれ。こんな歩く殺人事件みたいな男と一緒になったら心の平穏など夢のまた夢だぞ!」


 仕事机を叩いて言えば工藤新一は事件から事件を渡り歩いている自覚があるからか目を逸らし、蘭はといえば私の勝手でしょとプリプリ怒る。この世界ではなんと、遊園地でちびっこ化事件を前に工藤新一と私の可愛い蘭が付き合いだしたというのだから泣く他ない。それも蘭からの告白だと? 恨めしい、昔はパパのお嫁さんになるって言ってくれたのに! 憎し工藤新一! 絶対に認めないんだからな!


「ら、蘭のいけずー!」

「おっちゃんって関西出身だったか?」

「ううん、米花生まれ米花育ちのはずだけど……」


 仲睦まじそうな二人なんて目に入らないし入れたくもない。最後まで徹底抗戦してやる。もっと堅実な職業に就いた男を見つけてみせるからな、蘭。待ってるんだよ。

 階段を駆け下りて適当に走れば公園だった。ベンチにドカリと座り、ぐすぐすと鼻が詰まったからポケティでチーンとかんで屑かごに突っ込む。ものすごく銃を触りたい気分だ。


「ちょっとオニーサン」


 ぽんと肩を叩かれ見上げれば憎き仇敵、なんだかちょっと違和感があったがこの顔は工藤新一だ。


「私を追いかけたからって言って蘭と付き合えると思うなよバーロォォ!!」


 襟をつかんで一本背負い。それから目を白黒させてる青年の服装に首を傾げた。あれ……これは帝丹高校の制服じゃないような……隣町のなんとか高校の制服のような。そういえばちょっと顔が違う。――見間違えたらしい。


「イテテ……」

「ああすまない! 勘違いして君を投げ飛ばしてしまった!!」


 工藤新一似の彼をひょいと持ち上げてベンチに座らせ、公園の入口にある自販機に走ってコーラとコーヒーを二本買う。そしてまた急いで戻れば、お尻をさすっている彼がいた。申し訳ない……。









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 小五郎サイド。もちろん彼というのはあれ。
12/02.2010

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