ウォンカ!2
「Nice to see you、サトツ。あいかわらずのカイゼルひげね」
「なんと――お久しぶりです! 一体どうされたのですか? 試験会場に来られるなど」
しばらく会場前で立ちぼうけをして、やっと現れたカイゼル髭も愉快なサトツに挨拶する。目を見開いちゃって可愛いわね。
「どうしたも何も、受けに来たのよ。試験を」
「えっ!?」
「あんまり暇だったから会長に電話したの。そしたらもう試験がはじまってるって言うじゃないの。だから二次試験会場まで連れて来てもらったのよ」
ほら、と番号札406番を見せる。サトツは額に手を添えてため息を吐いた。失礼ね。
「お仕事はいかがされたんです」
「ちゃんとまかせてきたわ。私のところの子はみんな優秀で良い子なのよ」
職員のほとんどはウンパ・ルンパだし残りの子たちも良い子だし。みんな可愛い私の子供たちよ。
「それで良いと言うのなら私はもう何も言いませんが……」
「何よ、もったいぶっちゃって」
「いえ、何でもありませんよ」
変なサトツね。
だんだんと受験生が集まりだし、その中にはもちろんギタラクルやヒソカもいた。キルアはお昼までの時間が暇で仕方ないのか、木に凭れかかってあくびをしている。やだ、可愛い。他の受験生たちは私がいることに首を傾げてるし、ギタラクルはギタラクルで私がいるのを見て動きが止まってるし……つまらないわ。もっと楽しいことはないのかしら?
サトツと別れた私の元にやけに足早にやってきたのはギタラクル――ことイルミで、涎とかで汚い顎を拭いながら早口で訊ねてきた。
「リリー、どうしているの」
「Oh……いたらだめだった?」
「そんなことを言ってるんじゃないよ」
語気荒く言い募るイルミに手を振って止める。全く、どこの小姑かって思っちゃうわ。
「あまりに暇だからネテロに電話したら、He saidもう試験が始まってるって。Soわがままいって連れて来てもらったのよ」
「オレん家に電話してくれれば仕事を回したのに」
「別に殺しがしたくてウズウズしてたわけじゃないもの」
イルミと話しているのが珍しかったのか――きっとそうでしょうけど――ヒソカが近寄ってきた。
「やあ、ギタラクル☆ そこのお嬢さんは知り合いかい?」
「あらうふふ」
ヒソカの言葉に手を振る。そんなこと言ってくれるのは初めて会った人だけよ。二度目以降になるとロリババアって言ってくるのですもの。本当に失礼だわ……。
「この人はウォンカの社長だよ。家ぐるみで昔から交流があるんだ」
といいつつも、私キルアに会ったことないのよね。ゾルディックでは念を覚えないとお客様と会わせないって決まりでもあるのかしら。
「へえ! キミがウォンカの社長? ボクはヒソカ、仲良くしてね」
「ええ、ボーヤもかわいいし、私からもぜひお願いしたいわ」
「……ボーヤ? キミいくつ?」
ヒソカって可愛いわね。なんて言うのかしら、背伸びをした少年のような可愛さがあるわ。少年の心を忘れない大人って素敵よ。
「レディーに年齢を言わせるの? That's the way it goes(仕方ないわね)……ウォンカ社の社長は一度もだいがわりしてないのよsince it was founded」
「わお☆」
私の年齢をだいたいで逆算したのだろうヒソカは目を見開いた。イルミは私の話し方に慣れているから何も言わないけど、ヒソカはこれが初対面。英語できちんと伝わっているか不安だわ。
「つまりはまあ、私の方が貴方よりもseniorってことよ」
「なるほど、もうお嬢さんと言う年齢じゃないね☆」
失礼な子ね。女の子はいくつになっても少女の心を忘れないのよ。ついでに私がウォンカ社を設立したのは二十三年前で、当時の私は十四歳だった。ヒソカがいくつかは知らないけど、まだ二十代なのは間違いないわ。
「というわけ。Little boy.... Would you like some chocolate?(チョコレートは如何?)」
「Sure. I love it」
「あら、話せるのね」
「少しならね☆」
古語である英語や日本語を勉強できるのは知識階級が主で、他は独学するしかない。ヒソカの実家はたしか貧しかったと聞いた覚えがあるから独学かしら?
「flavorは?」
「うーん、イチゴで☆」
「Okey-dokey」
鞄を開ければチャーリーがイチゴ味の板チョコを差し出してくれた。良くできたウンパ・ルンパでママ嬉しいわ。
「チャーリー? 会った事あったっけ」
「I think you have met him……外出するときはこの子を連れ回してるもの。あなたってばinterestのない相手のfaceもnameもおぼえないわね」
鞄を覗き込んでイルミが首を傾げ、私はカラカラと笑いながら答えた。ヒソカが奇妙なものを見たと言わんばかりに目を見開いているのを見て更に笑う。ああもう、本当に可愛いわね!
「その生き物は何だい?」
「My muffin(ダーリン)……っていうのはjoke。私のかわいい秘書で、ウンパ・ルンパ」
「ウンパ・ルンパ?」
「この子達の総称よ」
チャーリーは男らしい顔を引き締めて頭を下げた。
「He is very good boy。これからよろしくしてね」
「わかった☆」
ヒソカに板チョコをあげると、嬉々として銀紙をはがし食べ始めた。男の子って大人になっても男の子よね。そして談笑しつつ待っていれば子ども組が現れ、時計の針が十二を指した。――さあ、二次試験の始まりだわ。私はここで合格しちゃっても良いのかしら?
+++++++++ 書き溜めこれで終わり。反応があれば続けるかな?
※ついでに、実際にこういう話し方をされる方がいます。CS(コードスイッチング)と言って、バイリンガル・トリリンガルの方同士での会話で(時々か頻繁にか)行われるそうです。「LeftにturnしたらYouきっと郵便office見つけられる」のように言うことがあるそうで、モノリンガルの僕らには彼らの言語中枢が混乱しているようにしか思えない話し方です。身近な例を挙げるならホンダの「This is 最高にちょうど良いホンダ」でしょうか。 04/28.2011
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