乙男…?3



「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう――スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずかご存じらしい。訓練を始めるのにあたり、短い模範演技をするのに、勇敢にも手伝ってくださるというご了承を頂きました――」


 教授は本当に嫌そうだ。もう心底嫌がっているとしか思えない顔をしてロックハートの後ろに立っている。ロックハートが何やら恰好をつけたり馬鹿したりしてるのを横目に教授を見上げていれば、こちらに気づいたらしい教授が何とも言えない表情でオレを見つめてきた。そんな目で見られてもオレにはどうもできません、教授。

 ロックハートがヘラヘラ笑いながら教授と決闘をすると言い出し、決闘もどきにしかならないことを知っていながらも少し脈拍数が上がる。楽しみだ――生で成人魔法使いの決闘を見れるなんて。


「先ず一礼し――スネイプ先生?」


 教授はオレを見下ろしていた。隣のジニーが顔を少し青ざめさせている。なんというか、教授も断れなかったからここに来たのに、どうしてそんな嬉しそうな顔をしているんだか。


「ああ、ロックハート教授」


 教授は他人の目からしたら厭らしいくらいニヤニヤと笑っていた。オレからしたら地獄への門が開いたような気分でしかないが。ああ、教授、オレは貴方のことが嫌いになりそうです……。


「私よりも適役であろう者を見つけました。貴方のレベルならばあれでちょうど良いでしょう――」


 酷い言いようだがロックハートは気付いていないのか、ほお、どなたです? だなんて言っている。


「フィネガン! 上がってこい!」


 ああ、見つかった時から嫌な気がしてたんだ。ジニーがオレの袖を握り締めた。……まあ、アレが相手だから心配するほどのことでもないんだが。長々とため息を吐いた後人込みをかき分け、舞台に上がる。スネイプ教授の爽やか過ぎる笑みに尊敬が薄れた。


「生徒に吹き飛ばされる教師というのも乙ではないか?」

「……陰険ですね、教授」

「そんなもの私が一番理解している」


 ロックハートはオレが相手だと見るやすぐに自分が優位だと信じ込み、無駄に恰好を付けている。――武装解除呪文は知っているし使った事もあるから、ロックハートよりはマシだという自信があるんだがな。


「えー、では気を取り直して。御覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています」


 一礼した後杖を向け合い、ロックハートの気色悪い口上を聞き流す。


「一――二――三――」

「エクスペリアームズ!!」


 三数えて呪文を唱えればロックハートが吹き飛んで行った。振り返ってみれば、教授がこれほど愉快なことはないとでも言わんばかりの笑みを浮かべて立っている。


「よくやったフィネガン」

「それほどでも」


 肩を掴まれ前後に揺らされながら褒めちぎられ、少しくらくらとしながら舞台下に戻ればジニーにキラキラした目で迎えられた。恰好良いわシェーマス、と抱き着かれたオレは、こっそり教授への評価を上方修正した。












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 恋愛感情抜きでも、可愛い子に抱きつかれれば嬉しい。にしてもスネちゃまが陰険。
11/24.2010

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