ウジャト越しの黒歴史



 いやもうほんとマジで。黒歴史ってかもうアレはなかったことにしたいの分ってくれない? あれはオレであってオレじゃねーの、つまり言うなればオレの偽物なの。――そう言って説得しても、神楽は聞き入れやしねー。もう止めて、オレのライフはもうゼロよ!!


「ホレホレ銀ちゃん早くゲロるよろし! 白夜叉って何あるか!?」

「うん聞こえない聞こえない聞こえない聞こえねーンだよ! 神楽が何か言ってるみたいだけどオレには関係ないのさようならまた来週!」

「銀ちゃん!!」

「僕も知りたいです。銀さんって攘夷派の人と顔見知りみたいですけど、一体昔に何されてたんですか?」


 ここは天下の喫茶店、つまりお外だ。外でそんなヘヴィーな話させんじゃねーよせめてお家の中でこっそり蝋燭を百本用意して(そんな金ないけど)深夜にするべきもんなんだ。いや、用意されてもしないけどな!


「捨てたい歴史だからホント聞かないでくれ」


 親の仇のようにパフェの中身をザックザックと撹拌し、二人のことは頭の中からすっぱりさっぱり弾きだそうとしたが、それを許す神楽は神楽じゃない。


「言うよろし――!! 気になるネ、銀ちゃん!」


 といいつつ首を絞めてくる神楽にちょっと昇天するかと思った。ちくしょうコイツら、オレの黒歴史をほじくり返して嘲笑う気か!? 神楽はともかく、新ちゃんはそんなことしない子だと思ってたのに。お父さん新ちゃんをそんな子に育てた覚えありません!! おかーさーん新ちゃんがグレたー!


「ったく、しゃーねーな……詳しく話すつもりはねーからそこんとこは我慢しろよ。オレだって言いてーことと言いたくねーことがあんの。分ったかあ?」


 そしてオレは語った。国を憂い戦った、厨二病患者の物語を、ちょっとだけ。


「そんな……じゃあ、銀さんは」

「そ。オレも元は攘夷派だったの。もう戦いには関わり合いたくねーって言ってんのに、アイツらは諦めないんだよなあ……。ホント、どうにかならんもんか」


 オレが正義だ!! アイアムジャスティス!! と言わんばかりのあいつらと付き合ってたら、絶対また厨二病が再発する。『力こそ正義だ、オレが正義だ』とか素面で言っちゃう人間には戻りたくないの。大戦前にやった演説(高杉の次で、締めくくりの挨拶だった)で『諸君、オレは戦争が大好きだ!』とか言ったのも、『ションベンは済ませたか?』って宇宙人に訊いたのも、何もかも黒歴史なの。分る?

 遠い目をしたオレは、気付いてなかった。この喫茶店で土方が休憩を取ってたこととか、沖田がこっちを窺ってたこととか。気を抜きすぎ? それって良いことだよね! もう戦争のカンはどこか遠くに行ったんだよ。












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いらはいto銀玉を望まれる声が多かったので、題名に漢字一個足してシリーズ化。
11/16.2010

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