あの子を探して9
私の血は万能薬として高値で売られた。今さら幻影旅団にまとまった金が必要というわけじゃないけど、色々と伝手を作るには私の血は便利だった。盗品は闇のオークションに出すしかない。でも、私の血は表も裏も関係なく売ることができる。お金は人を裏切らないと言うが、単なるお金よりも薬の方が価値があることを分っている者と縁を結ぶにはちょうど良い手土産だ。
あれからはや三年、十歳頃の姿まで戻ってしまっていた私はようやっと十四歳になった。ノブナガとフェイタン以外には実年齢よりも下に見られることがほとんどだが私としては『プリクラの私』にだんだんと成長していることに満足している。そして、私の血が万能薬だとは今のところ誰にも知られていない。が、もし知られたら私の身が危険だということでノブナガに念を習った。念系統は変化系、能力は『私と私(クッキーカッター)』と『叩かれた扉(ノブレス・オブリージュ)』の二つ。『私と私』は分身の術のようなもので、念で私を複数体作ることができる。誘拐されそうになった時に分身を追わせれば逃げられるだろうということで作ってみたが、戦闘でも役に立ったのでなかなか便利なもんだ。よくよく考えてみればカリオストロだっけ? ヒソカと戦って負けた男のダブルと似たようなものだった。『叩かれた扉』に関してはある意味医療用。私の血は万能薬といえど長時間放置すれば分離する血液で、長期保存には向いていない。だから念の保存料をということで物質の時間を止めることができる能力を作らなければならなかった。
「四番が欠番になった?」
「ああ、ヒソカって奴に殺されちまった。由麻はしばらくアジトに近づくんじゃねぇぞ。あいつは好かねー」
「ほお」
以前は所有物扱いだったが、今の私は幻影旅団に所属している状態だ。所有物はモノ扱いだが諸族なら人扱いだ。待遇がマシになって嬉しい。
ノブナガの家である和洋折衷の見た目の建物は意外と中が広く、地下一階は家庭シアターで二階は鍛錬場、地上階はキッチンや居間、二階にそれぞれの個室がある。居間で冷えたグレープフルーツジュースを飲んでいた私に、数カ月ぶりにアジトへ行ってきたノブナガが帰って来るなりそう言った。それにしてもヒソカか――ヒソカ少年はどうしているだろう? どこかで会えるのではないかと思って街をぶらついたりしているのだが、今の今まで出会えていない。どこに住んでいるのか聞きもしなかったし……名前しか知らないのだから仕方ないのだが。
「ノブナガ、アジトにはまだ人は残っているの」
「ん、そうだな……オレぁウボォーがいねーからさっさと抜けてきたが、他はまだいるんじゃねーか?」
「そうか――ノブナガ、私はヒソカという男を見てみたいんだが」
「ああん?」
「単純な興味だ。私の探している少年と名前が一緒なんだ」
優しくて可愛い少年なんだと言えば、あれが少年なわけあるか、目を洗って来いと言われた。全く、ヒソカがヒソカ少年だとは一言も言っていないというのに。
「まあ良い、今回のアジトの場所は分るか?」
「大丈夫。行ってくる」
グラスを流しに片付けて家を出、アジトへ向かう。今回はノブナガの家に近い場所だからすぐに着くだろう。もちろん、念能力者らしく走ってのことだが。
「今度めくるか……?」
この世界にヒソカという名の人間は何人いるのだろうか。もし見つかれば――会いたい。
「まさかあのヒソカ少年がヒソカなわけではあるまいしな」
ありえないとくすりと笑み、更にスピードを上げて走る。アジトはまだ遠い。
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最近更新速度が低下してます……むぅ。 11/07.2010
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