いらっしゃいませー16



 私の雷はどんな人だろーか、と思いながら世界を渡れば、どっかで昔読んだ――とても真剣に勉強した文字の洪水だった。


「なに、これ――変な文字だね」

「ハンター文字って言うんだよ。この世界の世界共通文字で、ひらがなとかハングルみたいなもの」


 何で知ってるの、なんて言葉はない。もうそういうものだと諦めたみたいだねー、それが良いと思うよ。いちいち気にしてたら心労で倒れるかもねぇ。


「にしてもハンター世界に雷――キルアか。家出少年か……!」


 繁華街を歩きまわりながら銀髪の少年を探すけど見つからない。もしかして別のキャラクターだったりするのかなぁ、その可能性は無きにしも非ずだけど、一番確率が高いのはキルアだよね。


「見つからないね」

「人が多いからね……見つかるまでここにいる全員を咬み殺そうか」

「いやいやいや犯罪者として手配なんてことになっちゃうからね」

「別にこの世界に住んでるわけじゃないんだし、良いんじゃない?」

「あ。……いやでもさぁ、人間としてそれは、うーん」


 もっとスマートなやり方があるはずでしょ。








 仕方ないから探すのは一休みすることにしてそこらへんの喫茶店に入った。恭弥はここの文字を読めないから何が良いか聞く。


「何飲む? コーヒーか紅茶か」

「緑茶はない――んだね。ならコーヒーで。エスプレッソね」

「ケーキは?」

「食べるわけないでしょ。夏輝が作る方が美味しいんだから」

「あはー、嬉しいこと言ってくれちゃって」


 どこのラブラブ馬鹿ップルだ、な会話を繰り広げてると、恭弥の後ろの席――クッションと植木で完璧に隠れてたところから銀髪が覗いた。探すのを止めたら見つかるって……何。


「おにーサン本当にこのねーちゃんが好きなんだな! ケーキで有名なこの店でそんなこと言うなんてよっぽどだぜ」

「僕は本当のことを言ったまでさ」

「へー、ンなこと聞くとねーちゃんの作る菓子ってのがスゲー気になる」


 植木越しじゃ話しにくいだろうから手招きしてキルアを呼んだ。嬉しそうに近寄って来るのは一般人との関わり合いに夢を持ってるからかも。ごめん、それ、粉々に打ち砕いちゃうから……。

 恭弥の隣に座らせ、二人が私と向かい合う形になった。キルアは左の廊下側――心臓を守れ、すぐに逃げられる位置。こういうところ、殺し屋としての癖なんだろうなぁ。


「あとで恭弥と食べようと思って作ってきたチョコケーキがあるから一緒に食べる? ほんとは喫茶店に入る予定なかったんだけどねぇ、この店は歩き疲れたからとりあえず入っただけなんだよー」

「えっ、良いの?!」

「もちろん」


 実のところ、雷の守護者説得用に焼いてきたからどんどん食べてくれて構わないとゆーか。とりあえずここでは喉を潤すだけにしてさっさと店を出た。たしか町の中心に噴水があったからそこで食べれば良いかなぁ?






「……」

「キルアくーん、どうしたのー?」


 一口食べて無言になったキルアに慌てて手をかざして振れば、ギュン! と音がしそうな勢いで見つめられた。


「ナッキさんスゲー! なにこのケーキ、本当にうまい! 今まで食ったケーキの中で一番だって、店は出してるの? オレ、常連になるんだけど!」


 ケーキをこれからも時々作るという契約で雷をゲット。なんていうか、毎回料理で釣ってる気がするんだけど……おかしくない?










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 久しぶりのいらはい(無印)。雷はキルアです。次は――嵐です。
09/25.2010

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