風紀委員長になったら7
用がないけど会いに行って……良いかなぁ。いつも雲雀さん忙しそうだし、オレ、邪魔になるかな。
さんざん迷って、結局行くんだからオレもダメダメだよなー。ダメツナって呼ばれることはなくなったけどやっぱ情けないっていうか格好付かないというか。てかさ、オレと雲雀さんの関係ってなに? 先輩と後輩、かな。なんか違和感あるけど。
「雲雀さん、オレです、沢田です」
いらっしゃいますか、と扉を叩けば返事があった。
「どうぞ。――どうしたの、こんな時間に。部活動に所属していない生徒は帰る時間だよ」
雲雀さんは処理済みの書類を青い箱に置いた。処理前らしい赤い箱の分はあと十枚かそこらしかない。もう終わるころだったみたいだ――そんなに邪魔にならないようで良かった!
「えっと、試験期間は毎日雲雀さんの顔を見てたので……なんだか変な気持になったんです。だから、えっとー」
言葉を探して視線を彷徨わせてると、くすりという笑い声が聞こえた。雲雀さんが笑ってる……!
「ふふ。僕の顔を見たら試験のことも思い出すんじゃないかい?」
「あ、それは、はい」
雲雀さんの顔を見たらドリルしなきゃって考えてしまう。
「僕の顔と試験が分離するまで見てて良いよ。すまないけどお茶は自分で淹れてくれるかい? あと少しだからさっさと片してしまいたいんだ」
「はいっ!」
雲雀さんの笑顔、迫力あるなぁ。格好良いしストイックな雰囲気があるし、まさに委員長っていうか。
勝手知ったる応接室の隣に増設されたミニキッチンでお湯を沸かす。家でも良く淹れるから味には自信があるし……雲雀さんにも、出そう、かな? ちょっとキッチンから顔を出して雲雀さんの机の上を見たら空の湯飲みがあった。湯を沸かす間に回収して流しでさっと洗う。
「へへっ」
いつの間にか置かれるようになったオレ専用の湯飲みを見てにやけた。初めの二回は客用のものだったのに、三回目にはオレの湯飲みがあった。存在を許されてるみたいで嬉しくなる。
書類に目を通している雲雀さんの横に湯飲みを置けば、片目を上げてオレを見て――笑ってくれた。トクン、と跳ねた心臓が温かい。頬に血が集まってなんだか照れたような変な気持になった。
「有難う」
雲雀さんがくれた一言が耳の奥に残って、オレは凄く幸せだった。まだこの気持ちに名前を付けることはできないけど……きっとこれは、もっと素敵な想いに成長するんだろう。
「どういたしましてっ!」
雲雀さん、雲雀さん、オレは貴方の隣に立ちたいです。――ううん、隣に立てなくても良い、せめて斜め後ろにいたいんです。貴方の斜め後ろに立てる、そんな人間になりたいです。
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ほのぼのを目指してみた^^風紀委員長の続きを、とコメント四番目様のご注文でした☆ 09/24.2010
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