乙男…?2



 スネイプ教授が疑われている――原作を読んで何こいつら脳みそ足りてないんじゃないか? と思ったオレは間違ってないと思う。いま現に疑われている身としては、三人そろって救いようのない馬鹿なんだと納得するしかない。


「あれ、スネイプ教授……?」


 ネビル・ロングボトムがオールバック坊ちゃんに苛められている、というよりはおもちゃにされて弄られているのを横目に図書館へ来れば、スネイプ教授がオレの特等席――いや、教授は何年もここにいるんだからきっと教授の特等席だったんだろう、本当は――に座っていた。読んでいる本の内容はさっぱりわからないが字が小さいうえページが多い。転生する前のオレだったら読まずに放置しただろうこと間違いない類の本だ。


「――シェーマス・フィネガンか」


 舌打ちでもしたいように顔を歪めたスネイプ教授に思い出した。そういえば教授はグリフィンドールが嫌いだった。かのハリー・ポッターをいびってストレス発散するくらい嫌いなんだからよほど嫌いなんだろう。


「何をしに来た?」

「本を読みに。もし教授のお時間がよろしければ質問をしたいのですが」

「……好きにしたまえ」

「有難うございます」


 元女の身からすれば、そして前世と今生を純粋に足し算すれば私と教授の年齢差はそんなにない。二十代後半の女の立場から三十路初めの男として教授を見れば――ぜひ結婚を前提としたお付き合いをしたい。定職についてるし、顔も良いし声も良い。性格が少し陰険だとしても初恋を貫いたその純真さそんな欠点なんてカバーしてしまう。

 結婚を望む二十代後半の女性には素晴らしい優良物件。なぜホグズミードの皆さんがこんな良い男を放っておくのかさっぱり分らん。


「――私の顔に何か付いているか?」

「あ、いいえ」


 長いこと見つめすぎたらしい。顔をしかめながら唸るように訊ねてきた教授に両手を振りながら首も振った。


「教授がなぜ未婚なのか不思議に思っていただけです」

「……は?」

「教授ほどよい男でしたら世間の女性も放っておかないと思ったのですが、教授のそんな浮ついた噂は聞きませんし……。たとえ教授がそういう誘いを断っているにしても食堂の話題になると思うんですよ」

「何を勘違いしているのかは知らないが、褒めても無駄だ」

「へ?」

「は?」


 素っ頓狂な声を上げたのがそんなに変だったのか、教授も目を丸くしながらオレを見た。


「オレはただ教授に女性からのアプローチがないのは何故なのかなと思っただけですが」


 だって、なぁ?


「オレから見て、教授は魅力的な男です。給料の高い職に就いていて、結婚を望む女性にはとても魅力的な身分を持っています。顔色が悪いのは研究で地下に引きこもることが多いからでしょう。そんなのは日光浴をすれば数週間とせずに改善される、別に欠点でも何でもないことです」

「……ああ」

「性格は少し陰気ですが世の中探せば教授以上に陰険で根の暗い人間なんてごまんといますから問題ではありません。オレからすれば、グリフィンドール寮の人間は陽気というよりは猪突猛進で後先考えず他人の迷惑も顧みない馬鹿の集団ですから――教授くらい静かな方が落ち着いていられます」

「そう、か」


 少し話しすぎたかもしれないが、言いたいことは言った。教授が女性関係の噂と無縁な理由は分からないがとりあえず言い切って満足した。


「そうか」


 きょとんとしながらオレの話を聞いていた教授だったが、そうかと呟きながらふっと笑った。面白い後輩を見つけたように目を細め、口元はほころんでいる。


「女性の噂がないのは私が結婚するつもりはないと公言しているからだ、フィネガン」

「あ、なんだ。きっぱり断っているんですね」

「ああ。煩わしいことに関わるつもりはないのでな」


 それから好きな本に話題が移り、入学してまだ一カ月だがもう学校には慣れたのかだとか分らないところがあれば私に聞きに来いだとか言われた。素晴らしい先生だな、本当に。オレが向学心があると気付くやマンツーマンの講義を始めてくれるし疑問にも論理的に説明をくれる。初めは前も後ろも分らない状態だったが懇切丁寧な説明にオレもやっと理解が追い付き、だんだんと教授との一対一講義はなくなっていった。学年末試験前頃には月に二度程度になったんだが――その図書館での勉強を知ったあの三馬鹿が、オレがスネイプ教授と協力して賢者の石を盗もうとしているだなんて考えやがった。

 二年になってからはジニーとの勉強会もあって忙しなかったが、月に二度は図書館で個人教師になってもらった。それを毎回見咎めては騒ぐあいつらは――暇なんだろうか?











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 いつもより長めになりました^^昨日の先着二名様に外れてしまった方のリクを――消化できてない^^; なんか変な感じ。
09/24.2010

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