ドリームメイカー14



 どうやらやっぱりオレは人質に行くらしい。父上はそう直接的な表現をしなかったけど、大阪に行けというのは――豊臣秀吉のところに人質に出されるってことだろう。どれだけ頑張ってもオレには安芸を継ぐ権利なんてないんだな……そう思うと気分が凄く落ち込んだ。後見のない、母親もいないちょっと賢しいだけの餓鬼なんて必要ないんだ、オレの命はそこらへんの駒よりも軽いんだ。きっと。


「謹んで、拝命いたします――」


 父上はオレに、大阪の現状の視察と報告を命じた。建前は大阪との親交を深めるためとのことだけど、本音はやはり別のもの。そして期間は無期限――実質人質以外の何でもないだろう。オレの代わりに豊臣勢の誰かが来るとは聞かないけど、他の何かが安芸に渡されるんだろう。

 深々と頭を下げ、いつにもまして無表情の父上の前を退出する。


「松、山……」


 部屋を出てすぐに現れたオレの忍に倒れこむ。オレが倒れて動転したらしい松山は一瞬のうちにオレを部屋に連れた。年甲斐もなく湿った両目を松山の肩に押し当てればおどおどと抱きしめられる。


「オレは――父上にとって不要なんだろうか? だから人質に出されるのかな?」

「違います! 元就様は少輔太郎様のお体を案じられて……!」


 違うのです、と言葉を重ねる松山に頭を振った。気遣いは嬉しいけど、そんなことを言われたら夢を見たくなるから、言わないで欲しい。毛利家は弟が継ぐ。オレは――


「もう良いんだ」


 ただ粛々と、甘んじて受け入れよう。本来オレはこの家にいらない子だったんだから、ここまで育ててくれて有難うとお礼を言うべきなのかもしれない。

 ――うん、なんかふっきれた! オレは安芸が大好きで、父上ももちろん好きだ。安芸のためならちょっとくらい体を壊したって良いと思ってた。でも、もう止めても良いよな。オレ、疲れたんだ。努力の結果がこれだっていうんならもう仕方ない。諦めよう。


「楽しみだね、大阪。どんな所なんだろうね?」


 住めば都というし、きっと楽しいと思う。思ってなきゃやってらんない。

 悩んでても前に進めない。もうすっぱりさっぱり諦めて、毛利家と豊臣家が仲たがいしたりして殺されるまでこの世を楽しもう。せっかく転生したんだから楽しまなきゃ損だよね!








 ――と、そう肯定的に考えたオレの思いを返してくれとは言わないけど。目の前にはま白き砂浜、たなびく紫、膝を抱えぐずる白髪の少女……。


「あれ?」


 元親さん、若返ってませんか。












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 まさかの時間トリップです。するとは思わなかったでしょう、フハハハハ――!! アニキが三票ゲットで勝ちましたので、アニキと一緒です^^
09/24.2010

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