チェンジ、誰かチェンジ!
不幸ポイントと言うものがある――らしい。人間にはそれぞれ幸福と不幸とがだいたい半々くらいで与えられているそうで、その幸福や不幸をどれだけ消費したかによってポイントの付加や取り上げがあるんだとか。
「見事に……不幸しか消費してきませんでしたねー」
五歳で両親は事故死。七歳で引き取ってくれた祖父母が電車の脱線事故で心臓停止、叔父夫婦は良い人だったけど従姉がグレててDVの標的にされた。町を歩けば犯罪者と間違われ電車に乗れば痴漢よと叫ばれる。それほど酷い顔をしてたのか、オレは。自分の顔なんて自分自身が一番見慣れてるから甲乙付け難いんだが――きっと犯罪的な顔をしてたんだろう。
「幸福ポイントがこんなに残ってる方は初めて見ました。先輩が時々愉快な死亡者さんたちの話を教えてくれたりしましたけどー……パネェな」
「あの、幸福とか不幸とか、どういう意味ですか」
書類を覗きこんで独り言に精を出してる店員さんに声をかければ、笑顔でサーセンと謝られた。謝る気ないだろ。
「でぇ、さっきの説明の続きですけどー……マジ本気でパネェっすよお客さんスゲーよあんた。不幸と幸福の釣り合いが取れてなかったらその分持ちポイントに加算とか減算とかされるんですけどー、お客さんってば二十年も生きてないくせに不幸の消費がホントありえなくてェ、これはもう加算しなきゃ哀れってゆーか加算して当然ってゆーか。フツー不幸も幸福も500ポイントずつ持ってるんですよ、人間って。なのにお客さんってば幸福が490残ってるとかどんだけ運に見放されてたの。不幸の消費量がこの年齢で300越えてるとかどんだけー?」
「あの、日本語話して下さい」
「話してる、超話してる。でぇ、お客さんの不幸残量は163で幸福残量が490だから差額が327だしー……えっと、掛ける5すんだよね確か。1635? でそれに持ち点加えて2088かぁ。お客さん買い放題っすよ良かったね!」
「あの、まだ何が何だか」
「これで分んないとかどんだけー? あんた頭の回転遅いの?」
良く分らない言葉をつらつらと並べたてられ、日本語かも怪しい気がする宇宙語もどきで説明(らしきもの)をされてもさっぱり分らない。そしていつの間にか彼女のお勧めだというものを購入することが決まっていて、理解が追い付く前に全てが終わっていた。
「頭の回転遅いお客さんにはアタシからのオプション付けたげるー。お客さんが行く世界ってもう決まってんだけどぉ、原作開始まで時間あった方がいーだろーし百年単位でいじっとくわ」
「え、は?」
「アタシ超やさしー。これオニ優しいってゆーんだよね下界で。うわアタシオニ優しー」
彼女が天井から伸びている紐を引っ張った瞬間、オレの足元が消えていた。
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キルアそっくり転生。思いついた設定を付加してスタートですたい。 09/22.2010
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