学校に行こう!2



 マダムマルキンの店で服を採寸している時、どう見ても巨人の血が混じっているだろう巨漢がドアの向こうに現れた。あんなのがこの小さな店内に入ってきたら天井で頭を打つんじゃないか?

 ドラコは隣り合った少年にご高説を垂れてるし、私は実はもう終わってて暇だ。初めて見る巨人族に私の目はくぎ付けで、巨人が少年ににっこり笑って手を振ってるのを見て知り合いかと納得した。是非お近づきになりたいものだ。


「巨人。良いなぁ……」


 高いところから見下ろす世界は私たちの考えるものとは異なるに違いない。箒とはまた違った楽しみもあることだろうし――身長が一時的に三メートルを超える飴とか作ろうか。なめてる間だけ身長が三メートルになるんだ。良いかもしれない。

 そんなことを考えてると、いつの間にかドラコの採寸も終わったらしい、マダムマルキンに手を振られながら店を出る。


「何かあったのですか、姉上?」

「うん、ニアーズの新商品を思いついてね」

「本当ですか?!」


 私の名前はサタニア、愛称がニアだ。だからブランド名もニアーズ。いたずら好きの子供たちと多くの旦那様奥様方から愛される、安価なものから高価なものまでなんでもござれだ。


「さっきの巨人を見て思いついたんだけど、なめている間だけ身長が三メートルになる飴とかどうだろう。箒に乗るのとは違って面白いかもよ」

「ほう……さすが姉上ですね!」


 ドラコも目を輝かせてることだし、とくに低年齢のお子様なら大喜びするんじゃないかな?


「逆に小さくなると言うのも良いかもね、赤い飴は小さくなって青い飴だと大きくなるとか」


 ママァちゃん――不思議なメ○モネタだけど最近の若者には分らないかもね。ついでにママァちゃんというのはメ○モの元の名前。そして赤と青のどっちがどっちだか忘れたから元ネタに正確とは言い難い。


「僕にも下さるのですよね?」

「もちろんだよ、でもドラコを実験台にしたくはないからドビーで試してからね」


 何匹もいる屋敷しもべ妖精の中で一番気に入らないのがドビーだから、頻繁にドビーを毒見と言うか実験台にしてる。何が気に入らないって性格が気に入らない。自由を求めて、で、どうするの? みたいな。私が直々に辞令渡しちゃっても良いんだけど、今のところ実験台があいつ以外いないからまだ辞めてもらっちゃ困る。


「はい。――あ、父上」


 ナルシッサさんは私がホグワーツに通うことになったと知ってから私に対しての対応が穏やかになった。たとえこの世界では異能と言われる才を持っていたとしても彼女にとっての『魔法族の条件』は魔力。だから父上は私がその異能の力で入学することをナルシッサさんに言っていない。私も言わない方が良いと思う。


「父上、もう教科書は買われたんですか?」

「ああ。あとは杖とペットだけだな」

「私はどうしましょう、父上」

「――とりあえず店に行ってみなければ何ともいえんな」


 魔力がないと杖も選んでくれないと思うんだけど。ナルシッサさんがついてきたのは失敗だったなとチラリと思う。ナルシッサさんは私が魔力に目覚めたのだと思っているから、杖に選ばれなかったら錯乱するかもしれない。困ったことだ――いっそのこと何の魔力もない杖に能力を付加して私オリジナルの杖でも作ろうか。











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 念以外には買わなかったけど、念の才能がとてもあるサタニア氏。
08/23.02010

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