学校に行こう!
ドラコが手紙を振り回しながら父上に叫ぶ。その手の中の手紙はもちろんホグワーツの入学許可証で、つい今しがた梟が届けてくれたものだ。ついでに私の元には届いていない。
「父上、何故姉上に許可証が届いていないのですか?! 姉上こそ誰よりも入学する権利を持っていると言うのに!」
「ドラコ、ニアは魔力を持っていない」
「ですが!」
そう、私はスクイブだ。魔力なんてからきし持ってないんだぜ! その代わりに念能力持ってるけどね! 系統は操作系よりの強化系、私にぴったりの能力だ。簡単に死にそうにないからね。魔法も跳ね返しそうだし。
「ドラコ、私は気にしてないから。魔力の代わりに別の能力を得たんだから、ね? もしかすると私がこの念能力者の始祖になるのかもしれないし」
まあ、そんなことは万分の一にもありえないけどね! ハンター世界とは世の理が違うんだ、ということで私だけがイレギュラー。
「そうですね! 姉上が念能力者の祖となり、姉上の念と言う素晴らしい能力に気付く事が出来ない愚鈍なホグワーツの校長の蒙昧さを後の世に知らしめるのですよね」
ドラコ、ドラコー? 夢と希望のワンダーランドに思考が飛翔してるぞ。
「ドラコ、帰ってこい。――それにホグワーツはマグル共に見つかることのないよう魔法が掛けられている。魔力のないニアはホグワーツを見ることができんだろう」
「……そう、なんですか……」
沈むドラコ、諭しつつも悔しそうな父上、そして思いついた私。
「見ること出来ますよ、父上」
「何?!」
「出来るのですか姉上?!」
だって私は強化系。簡単ですことよそんなのお茶の子さいさいなのさ。
「ええ。私の『付加する能力』を眼鏡に使い、魔法による認識阻害を無効化すれば問題ありませんよ」
強化系って聞いたらさ、肉体強化しか思いつかない――なんてことはないと思うんだよ。自分以外ものも強化できるんじゃないの、強化するだけじゃなくて付加価値みたいなの付けたりとかできないんだろうか? と思ったのがきっかけで。今では私は父上には劣るけど稼いでるんだよねこれが。
たとえば。食べたら必ず鼻血が出るチョコとか――これは興奮させる効果を強化した。絶対に効く育毛剤とか――これは父上の髪が心配になったのがきっかけ。だいたいは悪戯グッズだけど、全部に共通するのは『消耗品』であること。私がしようと思えば『魔法を跳ね返すマント』とか作れちゃうから、こういう罪のないものしか売れない。まあ父上やドラコの服は『強化』してるんだけどねー☆
「素晴らしい! それならばニアもホグワーツに行くことができるな」
「ええ、ただ『魔力はあるが壊滅的に呪文が苦手な魔女』だと思われるでしょうけど」
「そんなことはどうでも良い、ニアがホグワーツに通うか否かが問題なのだ」
父上が入学をそこまで喜ぶ理由は二つある。一つは私がスクイブだと言う噂を否定できること――名門のマルフォイ家からスクイブが出たなど恥でしかない。二つ目は母上――ナルシッサさんが私を娘と認めるだろうこと――私がスクイブだと知ったナルシッサさんは、私を娘だと認めていない。傍系とはいえ名門中の名門ブラックの名は彼女の誇りらしく、自分が生んだのがスクイブだなんてことは考えたくないんだろう。
「楽しみですね」
そういや、前世でホグワーツって名前をどっかで聞いた覚えがあるけど、何だったかな。分んないからどうでも良いや。
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いらはいシリーズ、ドラコ姉転生。スクイブだけど念能力があるからあまり困ってないニア氏。ついでに彼女はハリポタ未読、映画も見ていません。流行すると逆に見たくなくなるタイプで、人のうわさ話で聞きかじっている程度。ほぼ無知。 08/29.2010
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