振り向けばマジカル2



 魔女っ子法第一条

「魔女っ子は成人に至るまで両親が定めたラブリーな衣装を正装とする」

 魔女っ子法第二条

「魔女っ子はラブリーな演出により正装に変身しなければならない」

 魔女っ子法第三条

「魔女っ子の杖はラブリーステッキ☆とする」

 魔女っ子法第四条

「魔女っ子の呪文はラブリースペル☆とする」




「へー、そんな法律が」


 数百年前に魔法界をシュッポーン☆ と出奔したのと笑う母さんにどう反応を返して良いのか分らないまま、僕はへぇボタンを連打した。――のが、六歳の時の話。話を聞いたおかげでここが「マジョリン」の世界だって気付けたんだけど、まさか僕があのモブと見分けがつかない空気主人公だとは思いもしなかったよ。そして、僕は男だから必要ないだろうと今まで話題にも上らなかった魔女っ子法の話を聞いたのはつい昨日のこと。うろ覚えだったから正直助かる。


「ええ、魔法使いや魔女の中にはこの法律に反対する人もたくさんいるけど、この法律が改正に至ったという噂は聞かないわね」


 母さんがふふふと笑いながらそんなことを言った。


「もし晃一が女の子だったら着せたいって思ってた衣装もあるのよ」

「へえ、どんなの?」


 だいぶんお金をかけたんだけど、女の子に生まれなかったし無駄になっちゃったわと言う母さんにお願いして見せてもらえば、白と黒を基調にした、他の色なんてさっぱり使ってないぜ! なゴスロリだった。これなら倫子も喜んだだろうに、何で「あの」父親似の凛々しい顔に臙脂色の山高帽&布たっぷりのドレスなんだろう。可哀想にもほどがある服だよね。


「これ、もらっても良い?」

「良いけどどうするの?」

「んー、まあ気にしないで」


 水かぶって女になって、魔女っ子しますとは流石に言えないよな……。母さんにも女になること言ってないし、ただでさえ僕たちは魔法界から出奔して姿を隠してる身の上、僕たちの存在がバレちゃいけない。でも「失われた始祖の家系の子供は娘だ」って噂が流れたら良い目くらましになるよね。






 ――そして僕はその晩、初めて魔女っ子に変身した。


「ぴぴっとーぷりっとーぷりたんぺーぺると!」


 元ネタが分った人は沈黙を貫いてね。キラキラした星型の光が四方八方に舞って、溶けるように消えたパジャマの代わりに思ったよりもぴっちりとしたゴスロリが現れる。変身シーンはほとんどおジャ○女のお着替えと一緒にしたから想像しやすいと思う。ステップを踏めば編み上げのブーツが脛から下を覆い、肌の露出を極限なくすように長い手袋が肘上までを隠す。――魔女っ子法に反対だから出奔したんだろうか、父さんと母さん。にしてはノリノリでこれを用意してたみたいだけど。


「ぴぴっとぷりっと!」


 マジカルステッキはやはりお邪魔な魔女から。だって考えるの難しいし。今日は僕――ううん、私の記念すべき魔女っ子デビュー! オラワクワクしてきたぞっ!









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 知ってる人がいた……!
08/29.2010

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