出奔出奔また出奔



 俺頑張ったよ。頑張って頑張って――もう疲れたよパトラッシュ。もう真田にはいたくねーわ。ということで、俺、出奔します☆


「このうつけ者! そんななりをしておるから姫若子などと言われるのだ!」

「やーん! 松寿丸脱がさないでよー!」


 西へ西へと短い足で行脚し、中国地方に入った俺を待っていたのは、銀髪をした可愛い女の子の服を脱がそうとする茶髪の少年の姿だった。なんだどうした、この年齢のくせして強姦か。若いくせしてなんて犯罪者!


「そこな方! 嫌がる女子に何をしているのでござる!!」


 転生してから身に着いたやけに堅苦しいござる口調で怒鳴れば、二人はきょとんとした目を俺に向けてきた。――あー、もしかして。


「そういうプレイでござったか、いや……邪魔をした、お好きに続けてくだされ」

「何か盛大に勘違いをしているようだが、こいつは男だ」


 茶髪の少年が銀髪の可愛い女の子を指差しそんなことを言った。男?


「うん、弥三郎は男だよ?」


 ぷれいってなーに、と聞いてくる女子――もとい、弥三郎(♂)に衝撃を受けた。なんてっか、夢と希望と妄想の全てを打ち砕かれた気分だ! もしいたすことのできる年齢だったら結婚を申し込みしてただろうくらい可愛いのに! 神様の馬鹿……ッ!


「申し遅れたでござるな。某はしがない流浪の旅人、弁丸と申す者。貴殿の名前を伺ってもよろしいか」

「これは、我こそ礼を失した。我は松寿丸という」

「弥三郎は弥三郎だよ」


 弥三郎、君が女だったら! ちょっとの年齢差なんて問題ないのに。


「松寿丸殿と弥三郎殿は一体何をしておられたのでござるか? まるで親の敵のように弥三郎殿の服を脱がそうとなさっておられたが」


 強姦かと思った☆――とか言ったら松寿丸に殺されそうだ。松寿丸は嫌そうに顔をしかめ、弥三郎の恰好をどうにかしようとしていたのだと言った。なるほど、弥三郎は女ものの服を来て髪も簪刺して、女の恰好をしてる。男のくせに軟弱な! と思ったんだろう。


「このような恰好をしておるから姫若子などと陰口を叩かれるのだ」

「でも……こっちの方が可愛いし……弥三郎には可愛い恰好が似合うもの」


 あ、松寿丸がキレた。殴る様にして飛びかかるとマウントポジションで弥三郎を揺さぶる。痛そうだな。


「き、さ、ま、は!」

「やーん!! 松寿丸、怖い!」


 俺は何すれば良いのか分らなかったから、とりあえずそれを横で眺めて潮時を計ってた。









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 ちょっと短め。第三回弁丸出奔から開始^^
08/26.2010

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