風紀委員長になったら6



 沢田綱吉が頻繁に遊びに来るようになった。中間試験の一週間前だって言うのに全く勉強をしてないらしい沢田綱吉がペコペコと頭を下げるから仕方なく勉強を見てやることにした。代わりに母親の和菓子をもらうから差し引きゼロだね。


「何で分らないのか良く分ったよ」

「え、本当ですか?!」


 小学生からやり直した方が良いんじゃないかな。ゆとり政策が云々というよりは教師の怠慢だね、これは。基礎が身についてないのに応用が分るはずもない。今は数学を教えてるんだけど、掛け算を間違えるなんて絶望的だよ。僕は昨日、それが身に染みて分った。だから。


「はい、これやって」

「え――あの、これ小学四年生のドリルじゃ」

「教師の怠慢か君自身の怠慢かは僕には知りようもないけど、君は基礎が抜けてる。しっかりとした基礎なしに家を建てることはできないんだよ」


 今の沢田綱吉は『ただの不安定な土壌』だ。それも沼を埋め立てたような、すぐに地盤が緩むような地面だけしかない。だからここはいっそのこと中間試験は捨てることにして厚塗りのベタ基礎を作るのが先決だと思う。


「えっと、家?――良く分んないですけど、分りました」


 どっちだ。

 沢田綱吉がドリルをする横で書類を片付ける。まだ原作開始には遠いけど、新年度が始まったことと中間試験が近いから普段の二割増しといったところか。普段なら処理できない量じゃないが、沢田綱吉を教えてるからちょっと急ぎ足でした方が良いかもしれない。

 途中に休み時間を挟みつつ算数や国語を飽きないようにローテンション組んでさせた。一番最初に始めたからか、算数のドリルを終わらせるのが一番早かった。――四年生用だしね。どこが分らなかったのかが分ったと顔を明るくする沢田綱吉に安堵のため息を吐く。これで理解してくれなかったらどうすれば良いのか悩まなければいけないところだ。草壁に家庭教師をさせる――のは駄目だ。頼まれたのも報酬を得るのも僕だし、沢田綱吉が安定した精神状態で草壁の授業を受けられるとは思えない。








「雲雀さんのおかげです! オレ、本当に授業全然分んなくて……!」

「僕は何もしてないよ、君が僕の横で勉強してただけでしょ」


 試験の後、試験初日にあったからか最終日には返された試験の点数を見て沢田綱吉が涙を流しながら応接室に飛んできた。四十二点……ないよりはましってところかな。飛び跳ねて喜ぶ沢田綱吉に呆れながら言えば、ぶんぶんと頭を振って否定しだした。


「いえ! 雲雀さんが見てると思うとオレも勉強に身が入りましたし! それに雲雀さんに釣られて集中できたって言うか!」


 確かに。監視役がいるのといないのでは集中度が違うだろう。それと、隣にいる人間が集中しているか否かも集中の度合いに影響を与えるだろうことは想像がつく。――どうやら僕のしたことは間違っていなかったらしい。


「そう。君がそう言うならそうなのかもね」


 明日お礼持ってきます、母さんと一緒に作るんでリクエストありますか?! と聞かれたからみたらし団子を頼んでおいた。明日が楽しみだね。








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 風紀委員長をプッシュする声がありましたので、雲雀さん(もどき)が日の目を久しぶりに(←)見ました。アハ☆
08/25.2010

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