いらはいto幽白
正義感が弱いとか悪ぶってたとか、そんなんじゃないけど――私が人助けをするなんて思ってもいなかった。それも漫画みたいな、交通事故に遭いかけてる子供をかばうなんてこと。
転生して分ったのは、どうやらただの日本に転生したらしいと言うことだった。念を買ったのにハンター世界じゃなかったのを悔しく思いつつ念の修行して、マチの念能力を参考にした念糸を操れるようになった五歳頃、私は両親に連れられ引越しをした。
皿屋敷市、蟲寄市――こんな不幸な名前の市町村があってたまるか。どっかで見た、どこで見た……と考えて見れば、幽白だった。ちょ、原作うろ覚え! そして私は親が心配するほど数日の間部屋に閉じこもり、脱水症状を起こして病院に担ぎ込まれた。そこでのことだ、南野秀一に出会ったのは。とりあえず水分を補給させろと言うことで点滴に加えてポカリを流し込まれヒィハァ言ってる私を見つめる、年齢に反して冷静な瞳――こいついてこましたろかとチラリと思ったけどその気力も体力もなかった。
「私、萩。お兄さんは?」
「オレは秀一」
「……へぇ」
なんでだよこんな運命の出会いなんていらないよ。そう思った私は、正しかったと思う。母親から聞いたことには、秀一君の父親と私の父親が兄弟で――つまり私と秀一君は従兄妹なんだとか。本当は引っ越した次の日に南野一家が挨拶に来てくれたらしいんだけど私は引き籠ってて会えなかったのだとか。一生会わなくても良かったのに。
「――むぅぅ……」
お腹がタポンタポンで苦しい。人間の許容量を越えてる。母親は新たなポカリを買いに行ってて、歳が近いことから無理やり連行されてきたらしい秀一君と私は病室に二人きりだった。なんていうか、微妙な空気が流れてる。
「苦しいの?」
「え。――うん、ポカリの飲み過ぎで」
流石従兄妹と言うべきか、私の顔と秀一君の顔は似ている。兄妹って言っても通じるんじゃないだろうか? 通りがかるナースさんたちが微笑ましそうに私たちに微笑んで去っていく。
「萩、君は――」
もう苦しいから飲みたくないんだよなぁとため息を吐けば秀一君が口を開いた。
「君は、何?」
「何って、何が?」
訳が分らない。
「君はオレの追手? もしそうなら――たとえその体が南野秀一の従妹の物でも容赦しない」
「――は?」
キッと睨みつける秀一君に間抜け面を晒した自覚がある。偽りのない顔だと分ったのか秀一君も毒毛の抜かれた顔をし、慌てた様子で「違うのか? だがその霊力は」云々と呟き始めた。自己完結しないで頂きたい。勝手に疑って勝手に納得されても困る。
「すまない、変なことを言った」
「あ、はあ」
私と南野秀一――蔵馬の出会いはこんなものだった。後からよくよく考えてみれば、来世は霊能力者になるんだって言ってコンビニで霊能力をしこたま買ったから人間にはありえない霊力を持ってたんだよね、私。なるべくならハンター世界が良いけど、他の世界に生まれることになったとしても念能力があれば生きていけると思ったから念も買った。私が人間離れしてるのは――妖怪の目からは明らかだったんだろう。
「はぁ……」
「どうした、萩」
「いや、秀ちゃんと初めて会った時のことを思い出したのよ」
「――ああ、あの時か」
私の母親は数年前に死んでしまった。そして去年、秀ちゃんの父親も死んでしまった。私の父親は流石に弟の嫁さんに手を出す男じゃないし、秀ちゃんのお母さんも亡夫の兄と付き合うような人じゃない。伯父さんが亡くなったのを機会に隣に引っ越したから、今までよりも一層私と秀ちゃんは身近になった。疑いも今では晴れ、ただの従兄妹として付き合えていると思う。
「あの時からあまり萩は変わらないね」
「まあ、うん。秀ちゃんは背が伸びたね」
この世界には合わない念能力を使ってるせいか、私の成長は遅い。もう十三歳なのに見た目は十歳以下――八歳位に見える。これじゃ同年代の誰かと付き合っても相手がロリコンに見えてしまって可哀想だ。
「あ、そういえば昨日告られた」
「急に話が変わるね……。なんて男だい?」
「松田っていうの。隣のクラスの」
松田はロリコンだったみたいだ。クラスも違うしあんまり交流もないのに突然だったから……。私は一生ロリコン男の相手をしなくちゃいけないんだろうか? それはそれで悲しすぎる。
「へえ、そう」
次の日学校に行くと、松田がロリコンだという噂が流れていた。
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なんだか時間がゴチャゴチャしてます。今頭が回ってません。おかしいな……頭が働かない。 08/01.2010
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