いらはいto彩雲国
何でこんなところにいるんだろう、私。
「いらっしゃいませーご注文はいかがですかー?」
目の前には営業スマイルの女性、レジ台の上には品書きが置いてある。私は何の疑問を持つこともなく品書きを読む。チャクラ:200〜500魂、魔力:300〜650魂……。は?
「これは」
「お客様は生前に銀行強盗をお捕まえになったので、あの場に居合わせた十人と、人質になっていた女の子一人の命を救われました。元々命の危険がなかった十人につきましては一人につき200魂の追加で+2000魂、女の子に関しては女の子と彼女の将来の配偶者及び彼女らの子供二人合計四人を直接的・間接的に救われましたので一人に付き500魂の追加で+2000魂の増加となります。お客様の本来の持ち点415魂と合わせまして、お客様は合計4415魂のお買い物が可能です」
「あの」
「当方のお勧めとしましてはこの超能力600魂と幸運補正400魂でございます。この二つを購入なさいましてもまだ3415魂残ってるんです、大丈夫ですよ大丈夫」
「その」
「ああ、私としたことがついうっかり。お客様は自覚がおありかもしれませんがお亡くなりになられました。銀行強盗犯から女の子を守り名誉の死傷です。良かったですね、女の子は無事です」
「えーっと」
「ついでに魂というのは来世に身につけられるスペックを購入するためのポイントのようなもので、人間だれしも生まれた時には500魂が与えられます。善行をすれば加点され、悪行をすればその分減点されます。そしてお客様は持ち点が1000魂を越えていらっしゃるのでオプションサービスとして前世の記憶の持ちこし、記憶能力等の強化がついてきます」
「ちょっと黙れよ」
さっきからわけわからないことを機関銃のように言われて、どうしろというんだ。私が死んだ? それは思いだせる。それで、来世身につけられるスペックをここで買える……というのが良く分らない。
「ですから、今生で稼いだ善行ポイントで来世は楽しく過ごしましょうと言うことなんです」
「今私声に出したっけ」
「現在お客さまは魂がむき出しの状態であり、考えは私に筒抜けです」
「プライバシー権返せ」
「お客様は死んでいらっしゃいますから、人権はございません」
なんて店員だ!
「さあ、理解されたようですし何かご購入くださいませ! さっきも申しました通り当方のお勧めは超能力と幸運補正でございます」
これは私が悪いんだろうか。それともこの人の話を聞かない女が悪いんだろうか。
「お客様です」
「お前だよ」
品書きを見る。なんだかよく分らないものが書き連ねられ、私は良く分らないから店員のお勧めとやらにすることにした。――あ、でもこれも面白そう。
「じゃあ、超能力と幸運補正と、変身能力で」
これがあればコスプレとか最強だと思う。
「超能力に変身能力は含まれますが」
「え、ならいいや」
含まれてるのか……! なんてこった。
「頭の悪いお客様が、来世では頭が良くなることを願っております。では、いってらっしゃいませ」
「ちょ、それはどういう――」
酷い言いように文句をつけようとして、急に失せた足元に攫われて私は落ちて行った。
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彩雲国でも良くないですか? という声がありましたので書いてみました。彩雲の影すらない 07/25.2010
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