待合室での出来事3
今日も今日とて雨降り。雨の多い地域だから仕方ないとは分かっているものの、最近とみに多いなと溜息をつきたくなる。豪雨が降るのは珍しいけど、小雨が降ることは多い。とくにこの時期――梅雨になると、毎日が曇天。
「こんにちは」
通院してる人たちのキャンセルが相次ぐほどの天気なのによく来るな、と思いながら入口を見た。私と同年代の、髪型がとってもパイナップルに似てる美少年……。
「――おや」
「こんにちは」
私に気づいて目を丸くした骸(確定)にペコリと頭を下げる。赤と青のオッドアイが素敵ですよ、人間離れしてるけど。
「えーっと、何とお呼びすれば? 私は××です」
「骸です。六道骸。骸と呼んでください」
「じゃあ骸さんで」
今回は三回目ということもあり、私から勇気を振り絞ってみた。にこやかに帰ってくる返事に、キバっていた腕から力が抜けた。
「××さんはどうして歯医者に?」
「あ、私ここの娘なんです。お恥ずかしながら登校拒否をしていまして」
いじめとかが原因じゃないから、本当に気楽。本当に行けない人ってのは酷いらしいからね。精神的な腹痛や頭痛やで立ってられなくなって、昼にはケロリと治るけど学校に行くとなると再発するという――大変なんだろうなぁ。
「なるほど。ここらへんだと黒曜中ですか?」
なぜに二次元の学校に通わなくちゃいけないんだ。いや、喜び勇んで登校するけれども!
「いえ、自宅が少し離れた場所にあるので、そっちに」
並盛中でも行けるなら行きたいよ。毎日がバラ色になってスキップしながら登校しちゃうよ?
「骸さんはどうして歯医者に?」
とたん、骸は渋い顔をした。唇を尖らせるとか、キスしてって言ってるんですね分かります。誘ってるんですよね、是非頂かせて下さい。
「ちぐ――家族に、甘いものを食べすぎだと言われたんです。虫歯になっていないか診察を受けて来いと」
虫歯なんてありませんよと力説する骸に、よほどチョコとか食べまくったんだろうなと想像してしまう。きっと見てるこっちが胸やけしそうなくらい食べたんだろう。
「歯磨きをきちんとしていたら虫歯にはなりませんよ」
「そうですよね!!」
私がそういうと、骸は私の両手を握りしめた。私の手は変態キャラから好かれやすいんだろうか?
「正しい歯の磨き方をしていれば歯ブラシの毛先も広がりませんし、定期的に歯周ポケットの掃除をしにくれば大丈夫ですから」
歯周病の温床となる歯と歯肉の隙間の深さが三ミリ以下なら問題なし、三ミリ以上なら要注意――というか、予防を受けましょう、みたいな。
それで結果がどうだったかというと。虫歯はなかったけど歯肉炎で、来週も来るんだとか。歯間ブラシはSSSサイズがお勧めですよ。
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レポートからの逃亡第三段。またこれから次の更新まで日が空く予定です。 07/12.2010
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