輝々
その2

 忍は匂いがあったらいけない。だから私の匂いが移るのもいけない。それは分ってる――だから離れようとしてるのに、何で小太郎は放してくれないのかな。


「小太郎?」


 放してという意味を込めて呼べば、フルフルと頭を振って却下された。危険な目に会うのは小太郎なのに。だからこそ放して欲しいのに。


「駄目だよ、私の匂いが付いてたら小太郎が危なくなるんだから」


 お腹に回された腕に手を置いて言う。そしたら逆に抱きしめられて苦しくなった。あたた、小太郎力込め過ぎ!


「明日からまた出なきゃいけないんでしょ」


 痛いのと心配なのとで暴れて小太郎の腕を抜けだそうとしたら体の向きをクルリと変えられ、正面から抱き締められる。パクパクと何か言ってる小太郎の唇を読めば――


「こ、小太郎のえっち!」


 仕事中はどうしても禁欲の毎日を過ごすことになるし、男の人は女と違う形の性欲があるから可哀想かなとは思う。でもさ、それを自分から言う!? 「夫婦だから平気」みたいな顔してそんなこと言わないでよ恥ずかしいな……性に関しておおらかになったのは江戸時代からじゃなかったの?

 江戸時代は浮世絵とか御伽草子とか色々いうけど、一番はやっぱり春画に浮世草子。春画は浮世絵に先駆けて多色刷りされ、浮世草子は男子の理想とされたくらい。まあこの時代の好色っていうのは女好きの意味じゃなくて「芸能に造詣がある」の代名詞だったんだけど。

 小太郎がじーっと私の目を見る。純粋な目をしてるくせに、したがってることがアレだからなんだか裏切られたような気分だよ……私が悪いみたいな気分になって来る。


「ちゅーだけなら良いよ」


 許してしまうのはそう、小太郎が目を見てくるからだよ。化かされたような気分だけど、まあ――夫婦だから仕方いない、のかな。















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難産でエロチックな場面がさっぱり書けなかった挙句、ネタがそっちの方面に逝っただけの話。なんてこった……。それに短いし……。うわぁぁぁぁぁぁぁん!
10/19.2010

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