輝々もし私がキミと同じなら
ベッドに寝転がりながらうんうんと悩む。
この世界に生まれてから――私は体が軽いしパワーも生前とは比べるべくもないし、人間としての限界を突破してる気がする。きっと霊力だけのせいじゃない……秀ちゃんの中に蔵馬が入ったのは偶然じゃないと思うから。
「人間捨てたっぽいなー」
気付いたのは小五かそこらの時。いくらなんでも遅すぎる成長速度と超人的な身体能力、買ったとはいえ高い霊力。ただの人間として生活していくには多少でなく問題がありすぎる。まず結婚ができないこと、社会人として社会に出るのがほぼ不可能に近いこと。私がいくら二十歳を超えた成人だと主張したとして信じる人間がどれだけいることか。いっそのこと超童顔芸人とかいって芸能界に入った方が安定した収入を得られるかもしれないけど、そのうち化け物扱いされる可能性がある限りそれは駄目。
「いっそのこと魔界でも行ってあっちで暮らすとか?――いや、そしたらお父さんの老後がなぁ」
お父さんには大往生してもらいたいし、孫の顔見せたいし。身近な男で適当なのと言えば――秀ちゃんとか?
「うーん……これは流石に秀ちゃんに悪いよね」
秀ちゃんはどうせ人間と結婚できないんだし、私を扶養してくれないだろうか。でも秀ちゃんモテるし私みたいな童女もどきなんかと結婚したら社会から後ろ指差されちゃうよきっと。十六歳になっても見た目小学生だろうし、そのうち秀ちゃんと並んで歩いたらお兄さんと妹じゃなくてお父さんと娘になっちゃうだろうな。
「ジンジャー・ブレッドじゃないんだから……うん。秀ちゃんが可哀想だよね」
コールドスリープで長いこと若さを保ってるジンジャーとは話が違うし。――見た目が二十代になったら芸能界にチャレンジしてみようか。そのためには何かしらの一芸が必要だけど――得意なこと……手品? 霊能力は胡散臭いって思う人も多いだろうし、アクロバット?
そんなことを考えてたら、ドアをノックする音がした。
「はーい?」
「オレだよ」
「どーぞ」
噂をしたわけじゃないけど、なんとやらをすれば影。秀ちゃんが遊びに来てたらしい。お互いの合鍵持ってるから自室以外のプライバシーはほぼ皆無。
「何かがオレに悪いって聞こえたけどどうしたんだい?」
「あれ、聞こえてたの?」
「ああ」
きっと秀ちゃんのことだから、私が「結婚して!」なんてお願いしたら真剣に悩んじゃうだろう。
「気にするほどのことでもないよ。今この瞬間にいたずら計画は崩れ去ったから」
だから、そう誤魔化して笑った。
もし私がキミと同じなら
きっと悩むことなんてなかっただろうね
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とある方が熱烈にラブコールをくださったので書いてみた^^
09/21.2010
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