輝々
旦那様なんて、キライッ!

 妊娠してる間手を出せなかったからと縋りつくようにしてお願いされたら、そりゃあしても良いよと頷いちゃうと思う。小太郎は私が大きなお腹抱えてる間はずっと私の前に段差を作らないようにとか私が冷えないようにとか本当に気を使ってくれて、結婚前も過保護だったけど更に過保護になってた。だからほだされて許しちゃった――のが、いけなかったみたい。


「小太郎、私の言いたいことは分りますか」


 また生理が来ない。もう三カ月来ない。この意味が分りますか、と聞けば、神妙な面持ちで頷く小太郎。声が出ない小太郎は口パクで子供ができた、と言った。


「その通りです小太郎君。流石に三回目ともなると分らなきゃおかしいですからね」


 いつにない私の丁寧語に居心地が悪そうにしている小太郎に続けて言った。


「出産は女性にとって物凄く大変な仕事です。ただやって気持ち良くなるだけの男とは女は違うのです、分りますか」


 コクリと頷く小太郎に私も首を縦に振った。


「出産時に亡くなってしまう方も沢山います。大変なんです。血はどんどん流れていくし辛いし痛いし苦しいし」


 分りますか、この愚夫。


「年子で二人というのは良くあることですから私だって当然だと思って何も言いませんでした。ですが、何で連続三人も産むことになってるんですか」


 いくら、私が好きだから触りたいなんて言っても限度があると思うのよ。何で三年連続で失血死寸前にならなくちゃいけないの。私のお腹は休憩もさせてもらえないの?


「で、申し開きはあるんですか小太郎」


 小太郎は――土下座して床に頭を擦り付けた。謝れば済むとでも思ってるの、そんな簡単に許すなんて思わないでよね。


「小太郎には私が出産するまでの間触れることを禁じます」


 びくりと小太郎の背が震えた。何でそんなにショック受けてるの。そろりと私を見上げて、ふるふると横に頭を振る小太郎は犬みたいで可愛い。可愛いけど、これだけは譲れないから頑として跳ねのけた。


「たった七カ月でしょ、それくらい我慢出来るよね」


 この世の地獄を見たような顔をされた。私が悪いの?――ううん、違うはず。まだ数えるほどしか小太郎とはえっちしてないけど、その両手で足りる回数で三年間ほとんどずっと妊娠期間なんていうことになるなんて偶然じゃあり得ない。絶対小太郎のことだから私の生理のサイクル覚えてるんだ。いやらしい! この変態!


「何を言おうと私は許さないんだからね。この子が生まれるまで、触れることを禁じます!」


 バタリと小太郎が横に倒れ、慌てて他の忍の皆さんがそれを助け起こしに行った。私は振り返らずに部屋に帰って富太郎に小太郎の愚痴を言ってうっぷんを晴らした。











 半刻あと、先代率いる風魔忍の皆さんが小太郎を許してやってくれと頭を下げに来た。それはそれ、これはこれ、許してなんかやらないと言ったら一人が切腹しようとして慌てて撤回する羽目になった。いくら小太郎が長だからって、みんな大騒ぎしすぎだよ。











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 総員土下座というシュールな光景。
09/06.2010

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