輝々
チビセブさんいらっしゃーい

 某『ちっちゃくなっちゃった事件』から数日――ホグワーツには平穏が戻っていた。不可思議な事件も起きず、平穏な日々が――……


「と思ってたら、今度はセブなわけね」


 前は三歳児で今度は七歳児って、まあ七歳児は人の話を聞いて行動できる分ましかもしれないけどさ!

 昨日の金曜日の夜に寮に帰らずセブのところに泊ったから、今私はセブの部屋にいる。そろそろ起きなくちゃなーと思って起き上れば、当然ながら目の前にはセブがいる。でもどこがおかしいかって言うとセブはセブでもそこにいたのは七歳児のセブで、記憶も退行してるらしくて起こしてやればジっと睨んできた。でも可愛いから許す。眠たそうに目元を擦ってる姿も可愛いっす。


「セブ? 私はレイノ。レイノ・スネイプ。未来のセブの娘だよ」

「……未来?」

「そ、未来。今は千九百九十二年だから」


 カレンダーを呼び寄せて見せればセブはもっと眉間にしわを寄せた。ちびっ子がすると和むね。本物か確かめるように紙を擦ったり裏返したりするけど、正真正銘の本物だから何が出るわけでもなし、諦めたように頷いた。


「分かった、カレンダーは本物だな」

「うん、信じてくれた?」

「だが不審な点が一つある」

「何?」

「僕とお前は同い年だろう、なんでお前はホグワーツの制服を着てるんだ」


 名前を呼んでくれなかったことは横に置いといて。口調がこの年齢の時から厳格だったことも置いといて。年齢を疑われるとは思いもしなかったよ!! そういや周りのみんなはもう慣れてたから何も言わなかったもんなー。日本人は成長速度が白人に比べて遅いから、今の私がセブと同い年に見えるのは仕方ないのかもしれない。でもなー、私十一才なんだけどなぁ。


「これでも私十一歳だよ。ちょっと成長が遅いだけで」

「信じられない」

「本当だってば。とりあえずジジ――校長先生のところに行こう。このままじゃ埒が明かないもん」


 ということでセブに私のローブを着せて連行した。体格が同じだから本当にぴったりでなんか……嘆きたくなるね!

 朝も早いホグワーツの廊下は休日ということもあって人気がない。まあ人に見つからなくて良かった。


「えーっと、カボチャパイ!」


 開かない。


「ゴキブリゴソゴソ豆板! レモンキャンデー!」


 魔法界のお菓子なんてさっぱり食べない――というよりヨーロッパ産のお菓子は全然食べない私に、そうそうお菓子の名前のレパートリーがあると思わないでよ。分かる範囲内のお菓子の名前をこれでもかと並べ立てて、きっとどれかがヒットしたんだろうな、ガーゴイルが動き出した。


「お菓子の名前の順番も覚えなくてはいけないのか?」


 不安そうにセブが呟いた。いやいや、全部が呪文じゃないよ。


「呪文はお菓子の名前だってことしか知らないから、とりあえず知ってるのを言い並べただけだよ」


 さあ、いざ行かんジジイの部屋へ!! フォークス元気かな。

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