輝々ピーターパン症候群
目覚めればセブルス・スネイプ☆ みたいな。これ何の罰ゲーム? 陰険であのリリー・エバンスに叶わなかった恋を抱き続けて最後にゃぽっくり死んじゃったあの教授に、私は、なっちゃったみたいだけど! まったく訳がわからないっての。
「やあスリベニー! 今日も顔色が悪いみたいだね!!」
「ああ、そうだな。貴様らの顔を見たから悪くなったんだがな」
「ははっ、何言ってるのさ? 僕たちが何したって言うんだい?」
「何にもしてねぇよな、ジェームズ」
「そうさ! 僕たちは君を心配してこう言ってあげてるっていうのにね」
一方通行な会話をする私たちを、ルーピンとペティグリューは遠くで壁の影から見てる。見てるくらいならこいつらを止めてくれれば良いのに、役に立たないなぁ。
「ほう、階段の上から水をかけることのどこが――『何もしていない』ことになるんだかな」
「君の血色がいつもよりましだったからね、熱でもあるのかと思って冷ましてあげたんだよ」
「いつもの顔色に戻って良かったぜ」
こいつらは――常識と良識をママに教えてもらえなかったらしい。そりゃそっか、だってシリウス・ブラックの母親は狂人、ジェームズ・ポッターの母親も父親も純血。濃い血からは頭の悪い奴しか生まれないって言うしなぁ。とある権力者も頭が足りなかったらしくて、誰だかに渡す賞状を筒にして覗き込んで、『良く見える良く見える』って遊びだしたらしいしね……いや、頭が足りなかったのか、それとも教育係が力不足だったのか。それとも両方かな。――目の前の馬鹿二人を見る限り、後者じゃないかって思えてきた。
「――はあ。馬鹿を相手にしても疲れるだけだな……」
「馬鹿だって?! どうして君にそんな事を言われなくちゃならないのさ?!」
「お前に成績で負けたことなんてねぇしな!」
なんでキレられなくっちゃいけないんだ。てかお前らは小学生男子か。気に入らないものは全部なくなれば良いとか思ってるのか。絡んできたのはそっちだろうに!
「いや、僕は――お前たちが根幹の部分で馬鹿だと言ってるんだ。精神的な成長をしろ、お前たちはまるで一年生の時と中身が変わってないぞ」
現在私は四年生。つまり十五歳。もっと大人になれば良いのに、いや、なれないのかな?
「どうせ中身が変わらないんだ、どうせなら一年生からやり直したらどうだ? 今度こそ内面も成長できると良いな」
私はそう言ってサっと杖を取り出し振った。縮み薬ならぬ縮み呪文を唱える。実は前からこうしてやろうと思って考えてたのだ私偉い。
「ああ、ついでにその魔法の効力は一カ月だ。仲良く一年生と机を並べてこい」
呆然と自分の掌を見つめる二人にそう言い残し、私はさっさとその場を離れた。これからはあの二人を『ただの餓鬼』として心安らかにあしらえそうだ。
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