輝々
掌の中の小宇宙

「このクラスでは杖を振りまわすようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかも知れん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち上る湯気、人の血管をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。私が教えるのは、名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法だ――ただし、私がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」


 云々。原作で何度も読み返した台詞がそのまま肉声として耳に届く。恍惚としちゃいそうだ。

 私はハリー・ポッター。女の子として生まれたのに、原作補正でも入ったのか男の子の名前を付けられた可哀想な女の子だ。成人したら改名してやる。思ってたよりも早く過ぎた十一年、今私は、焦がれるほどに待ち望んだホグワーツにいる。スネイプ先生素敵っ。


「ポッター!」


 呼ばれたから笑顔でイエッサーと答えたら微妙な顔された。


「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

「生ける屍の水薬です。その効果は強く、服用量を誤ると永眠することになります」


 あえて言おう。私は変身術やなんやかんやよりも、魔法薬学が好きだ。予習はバッチリですよ。


「……ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、どこを探す?」


 スネイプ先生はちょっと項垂れて、また顔をあげて質問した。


「山羊の胃の中です。でもグロいのは苦手なので薬屋さんに行きます」

「お前がどうしたいかは聞いていない。最後に聞こう、モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だ?」


 スネイプ先生ってば額を揉み始めた。


「同じもののことです。別名アコナイトで、トリカブトのことです。モンクスフードと呼ばれる所以は『僧侶のかぶり物(モンクスフード)』に似ているためです。植物由来の毒の中でも比較的有名なもので、主な毒成分はジテルペン系アルカロイドのアコニチンです。採集時期と地域により毒の強さは異なりますが、毒性の強弱に関わらず生食は非常に危険です。食べると嘔吐・呼吸困難・臓器不全などを引き起こすため、死に至ることもあります。芽吹きの頃にはセリ・ニリンソウ・ゲンノショウコ・ヨモギに似ているため誤食による中毒事故が多発します。薬としては強心作用・鎮痛作用・皮膚温上昇作用・末梢血管拡張作用が認められています。ですが薬として使用するには毒性が強すぎるので弱毒処理を行わねば使えません。またトリカブトの花は古代ギリシャにおいてはベルセースとアステリアの娘であり魔術と子育て、月を司る女神であるヘカテーの花とされ、ギリシャ神話内ではケルベロスの涎から生まれたとも言います。これが『ウルフスベーン(狼の涎)』の名の元になっていると思われ――」

「もう良い――席に付け」


 このためだけに調べた知識を披露すれば、スリザリンからだけじゃなくてグリフィンドールの皆からも奇異の目で見られた。何でだろう。

 その後スネイプ先生がどうして答えを書きださないのかとみんなを咎めて、皆は必死になって私の説明を思い出そうとしながら羽根ペンを動かしていた。凄く満足した。











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やりすぎた☆

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