輝々
ひきこもり症候群

 新年と言えば凧揚げこま回しかるた等々あるけれど、私はいつでも食べることに本気だから。


「餅つき、雑煮、善哉エトセトラエトセトラ……」


 くーふーふー、と某パイナップル完全無欠主義者のキャラソンを歌いながら、私は全自動餅つき機を箱から取り出した。杵と臼を使っての餅つきは魅力的だけど、女房役をセブが出来るかと言えば出来ないだろーし、おひとり様の生活を長年送ってきた私が餅を突発的に食べたくなった時一人で餅をつくのは大変だから全自動にお任せ。台所の端っこでニヤニヤしてれば、セブがおはようと朝の挨拶をしながら来た。


「あ、明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとう」

「ちょっと待っててね、今から用意するから」

「用意――ああ、それか……」


 セブが超機嫌の良い私の様子に首を傾げ、ああ、と頷いた。毎年クリスマス休暇に帰ってくると必ず私が餅をつくから、セブも慣れたものだ。


「今年は何が良い? あんころ餅? きなこ? 醤油と海苔も良いなぁ。いっそ全部しよーか」

「レイノが好きなものにすれば良い」


 と言いながら毎年全部作ってるんだけどね。餅屋開けるよ。てかセブ、それ殺し文句っすよ。


「今年も餅で始まりうんそばで終わりたいなぁ」


 讃岐の生そば美味しかった。


「毎年この時期はお前の作る料理が和風になるな」

「うん。年越しといえばうんそば。年明けたら餅。田作り、黒豆、金時とか。どうも堅苦しいおせちは苦手だから豆くらいしか用意しないけど」


 それも時々面倒になってフジっこに頼るわけだけど。


「変圧器おっけぃ、もち米セット完了、アムロ、行っきまーす!」


 マッドで『アムロ、いっただっきまーす!』ってのがあったよーななかったよーな。何を食うんだ。ボタンを押して餅つき開始。


「さて、餅がつき上がるまで時間がかかるから何か食べてよう」


 私は年明けて初めに食べるのは雑煮だ! とか、そんな習慣はないから別に気にしない。


「じっくりことこと煮込んだブー」

「何だそれは……」

「豚?」


 今年は豚の肩をコーラ煮にしてみた。一センチくらいの厚さに切って焼いて、フォカッチャに挟んで食べたら美味しかろう。


「何故疑問形なんだ……。ところで、私が何かすることはあるか?」

「うんー、じゃあテーブルの上拭いといてくれる?」

「分かった」


 フライパンで軽く両面を焼いて、フォカッチャに挟む。バターは塗らないでそのままキャベツを敷いた。レタスの方が合うだろーけど、旬じゃないから止めといた。

 ああ、平和だなぁ……。今日がずっと続けば気が楽なのに。人生は世知辛いな。



 ――ひきこもれば楽じゃね? 無理だろーけど。

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