輝々
星屑DE桃太郎

 昔々あるところに、レイノとセブルスという仲の良い夫婦がおりました。レイノは川へ洗濯に、セブルスは山へしばかれに行きました。

 村の中でも暴力的なことで知られるジェームズとシリウスという二人が、村の中でも美人で知られるリリーとレイノ姉妹の妹の方、つまりレイノを嫁に貰ったセブルスを毎日待ち伏せているのです。リリーに求婚を断られ続けているジェームズは山に入らないと薪が手に入らないのを良いことに、いつも山でセブルスをしばいているのでした。良い迷惑です。

 セブルスが山でしばかれている間、レイノは怪我ばかりこさえて帰ってくる夫のことを思い、ため息を吐いていました。川から汲んだ水に着物を突っ込んでは、ジャブジャブと洗濯板に擦りつけます。まったくあのピーターパンシンドロームなジェームズ・ポッターには困りものです。どうにかなってくれないでしょうか?

 と。川の上流から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。ここまで大きな果物はもうお化けです。レイノはハロウィンの南瓜を思い出しました。あれは食用ではありません。

 あんなものを食べる気になどなりませんし、持って帰ってどうするというわけでもないので、レイノはそれが流れていくのを見送りました。レイノが見送った何十メートルか下流でシリウスの母親であるブラック夫人がそれを川から引きずり上げ、出刃包丁で割りました。

 中からは真っ二つになった黒髪の赤ん坊が出てきて、ブラック夫人は悲鳴を上げていました。赤ん坊の額には特徴的な傷があり、でも血でさっぱり分かりませんでした。



 またまた川の上流から桃が流れてきました。またブラック夫人のような悲劇を起こさないためにも、レイノはその桃を引き上げることにしました。包丁で切ると中身まで可哀想なことになるので、手刀で桃を割りました。

 すると、中からはやはり赤ん坊が! 赤ん坊の瞳は紅く、なんだか少し禍々しく感じられました。ですがそんなことを全く気にしないレイノはその子を家に連れ帰り、とりあえず産湯に浸からせて産着を着せました。どうしてそんなものが用意されていたかは――禁則事項です。







 夕方になり、セブルスが帰ってきました。朝にはいなかった赤ん坊が増えていることに驚き、レイノに訊ねました。産まれたと答えたレイノにセブルスは首を傾げましたが、赤ん坊はコウノトリが連れてくると信じていた彼は一人で勝手に納得してしまいました。

 赤ん坊はヴォルデモート卿と名付けられました。何故なら、レイノは彼の前に流れてきた赤ん坊が死ぬスプラッターを見たからです。死ぬことがないように、という祈りをこめて付けられたその名前をヴォルデモートはとても気に入っており、事あるごとにこの名前を自慢しました。




 平和な村でしたが、陸は繋がっているもの、ヴォルデモートが十五歳になった頃、こんな噂が流れてきました。


『鬼が島の鬼が将軍様の娘さんを攫ってしまったが、鬼が強くて歯が立たず兵隊はみんな逃げ帰ってしまった』


 ここは自分が立ち上がるべきだと、ヴォルデモートは考えました。名を上げるチャンスです。ここで将軍に恩を売れば出世できるに違いありません。野望の大きいヴォルデモートは将軍の座を狙っていたのです。

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