輝々星屑版白雪姫3(終)
小人の家は暇でした。働き者の小人たちは仕事に夢中で、本を買って読んだりしません。生活用品以外になにもない小屋の中、レイノ姫は暇を持て余してうたた寝していました。
コンコンコンコン。四度のノックにレイノ姫は目覚めます。
「うん?」
窓の外にはしわくちゃの老婆がいました。レイノ姫は無視を決め込みます。ああいう類には関わり合わないのがベストですから。
コンコンコンコン! さっきより強くノッキングされました。でも無視です。ガンガンガンガン!! しだいに大きくなる音に、仕方無くレイノ姫は起き上がり窓を開けました。
「りんごはいかがかね、お嬢ちゃん?」
「そのためだけにここまで来たの? 騒音すごい迷惑。帰れ魔界へ」
老婆はレイノ姫の口にリンゴを突っ込みました。レイノ姫は倒れます。
「ふふふ……これでレイノは死んだ! 見てろ、僕は世界の覇者となる――!」
老婆は言わずもがな王妃様でした。そして王妃様がスキップでお城に帰った五時間後、小人たちが帰ってきました。
「肺包、肺包、仕事が隙ー」
と七人で歌いながら帰ってくればそこには物言わぬ死体と化したレイノ姫が。Bはネクロフェリアになると言いだし殴られ、ドラコやハリーたちも大いに嘆き悲しみました。ボタン鍋を作ってくれた優しいお姫様のために彼らはガラス製の棺を作って埋葬しようと考え、流石必殺仕事人、一時間足らずで作り上げてしまいました。
七人は姫の遺体を小人たち用の墓場へ持って行進を始めます。花に囲まれたレイノ姫の体はまるで眠っているだけのようです。
そんな中、隣の国の王子は国境を密かに越え、悪婦ヴォルデモートの弱点を探ろうと森を駆けていました。もちろん馬で。
王子は険悪な国王夫妻――つまり両親の間に生まれ愛を知らずに育ち、陰鬱な雰囲気のため国の舞踏会では疎遠にされ、日々ますます内向的になっていましたが、国を愛する心だけは他人に劣らずありました。最近軍備拡張を行っているヴォルデモートを不審に思った彼は、自分の目で確かめようとしたのでした。
国境を越えましたがまだ森です。焦ることはないと並足で道を進んでいると、七人の小人がそれはそれは美しい少女を運んでいるところでした。
「そこの小人、待て」
王子は七人を引きとめました。今にも起き出しそうに美しい少女はどうしたのか訊ねます。そしてなんと、この少女はこの国の王女だと言うではありませんか。
「顔を良く見たい。棺を降ろしてくれ」
Bが王子の前に飛び出し両手を広げ、レイノちゃんは僕のものです、と叫びました。が、ただでさえ重いガラスケースにレイノ姫の体重、そして敷き詰めた花の重さ。七人でやっと持ち上げていた棺は雪崩のように落ちました。Bはハリーに殴られました。
「うっ……」
ですが、どうしたことでしょう? 落ちた衝撃でか口に突っ込まれていたリンゴがポロリと出て、レイノ姫は息を吹き返したのです! 呼吸停止から六時間以上も経っているのに。
「あ、貴方は」
「私は隣の国の王子、セブルス。――セブと呼んでくれ」
そしてどうなったかと言えば、二人はそこらへんに転がっている絵本と同じ結果を迎え、死ぬまで仲むつまじく暮らしたということです。
終わろう
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