輝々
紙面の向こうの君に、恋をした

 隔週刊『現代魔法使い』。その読者たちはこの年をどれほど心待ちにしていたことだろう? マイナー誌ながらその手の方々に愛好され、月二回の報告を心待ちにされていた。

 某魔法学校の理事をしているL・M氏も愛読しているだとか、いや実は校長のA・Dが――だとかいう噂がまことしやかに流れているのだが、それぞれは魔法使いの中でも力ある一派のリーダーであり学業の園の長であることから、真実であるとは疑わしいと読者らの間でも半信半疑だった。










「来年度、あの子が入学する! それも我らがホグワーツに!」


 FとGと書かれた面を被った二人が朗々と唱えた。教室内には五十人を超える人影がすし詰め、ドウという歓声を上げた。教室の壁が揺れるほどのそれをFとGは手で抑え、続けた。


「来年度からは生のあの子と会えるんだ、俺たちはここで決めなくちゃいけない――あの子を守る規則を!」


 拍手が巻き起こる。Fが黒板に大きく書き出した。


「規則その一、迫らない。その二、告白は禁止。その三、写真を撮った場合は会に報告することと、ネガの上納」


 Gが声に出していった。


「その一は――これはみんな当然として納得することだと思う。怖がらせたくて長年ファンやってきたわけじゃないからね。その二は、つまり抜け駆け禁止ってことだよ。これも納得してもらえると思う。その三は嫌かもしれないけど、この会の運営費用のために協力してもらわなくちゃいけない。入会金も会員費もない代わりに、撮った写真のネガを提供してもらう。提供者には提供してくれたのと同じ枚数だけ、無料で他の人の撮った写真を渡すようにしたいと思う。どうだろう、これがアンフェアだと思うなら手を上げて反対意見を言ってくれ!」


 賛成という声が各所から上がる。つまり秘蔵の写真にしたいと思えば、ネガを提供せずに隠していても良いのだ。だが提供すればその分タダで他の写真が手に入る。どちらが得かは言うまでもない。


「じゃあ、反対意見もないようだし『某少女を見守る会ホグワーツ分科会』はこれにて終了とします! 来年度からは独立した会となります。お疲れ様でしたー!」


 お疲れ、と各所から声が上がる。バラバラと彼らは教室を出ていき、FとGの二人も遂にそこを去った。











 この会が来年度には『陰険教授の娘を見守る会』と名前を変えたのは別の話。















 月二回発行される、隔週刊『現代魔法使い』。1982年秋発行のそれに載った記事『ストーカーの行動に迫る。ペドフェリアの怪しい言動』にて取り上げられた少女が話題を呼び、ストーカーであるX氏(本名不明)とその対象である少女Sが毎号載ることとなった。

 モザイク加工越しの少女に恋をした者の数、数多。彼女の未来は――明るいのやら、暗いのやら。

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