輝々
セブが私で私がセブで・下

 私はとても困った問題とぶち当たっていた。シャワーどうしよう。

 トイレは良いんだ、トイレは。とりあえず便座に座れば触らなくて済むんだ。何って、ナニに。でもお風呂は別でしょ? 洗わなきゃ駄目だよね? つまりは触るよね? ううん、セブが大関なのか横綱なのかとか知りたくないんだよな……ああどうしよう、さあどうしよう?


「どうしよう、セブ」

「……今日は入るな」

「え、嫌だよ気持ち悪い。不潔だぞ」

「私の顔でそんな口調でしゃべらないでくれ……」


 保健室の、カーテンで区切られた一区画。私とセブは額を突き合わせて悩んでいた。背もたれのない椅子に力なく座る。戻りたいよー。だってさ、


「お風呂入りたいお風呂入りたい、お湯につかって温まりたい」

「レイノ、今日ばかりは我慢してくれ」

「うう……っ! これもそれもジジイのせいだ! ジジイが私をお茶になんか誘わなかったらっ!」

「言っても詮無いことだ。元に戻るまで入浴は諦めてくれ」

 私はセブを見つめる。自分の顔って、他人の目から見るとこんな顔なんだなぁ。鏡に映ったのはどうしても左右逆になるし、なんだか新鮮だ。うん、お風呂入りたい。


「分かった……今日は諦める。だけど、明日になっても戻らなかったら」


 触らないのを諦めるよ。セブが青ざめた。




「――レイノ! お前、スネイプ教授と中身が入れ替わっていたのか?!」


 落ち込みすぎて集中力なんてないも同然な私に、人の気配を読めるはずがない。ドラコの来襲に驚きすぎて――えー、何と言うか、えーっと、うん。体勢崩して、『私』とぶつかったと言うか、ありさんとありさんがゴッツンコと言うか。


「ギニャー!」

「うわっ!」


 私は布団をかいて後じさりする。セブは赤くなって椅子に倒れこんだ――ん?


「戻っている……」

「ホントだ」


 衝撃的すぎたのか気を失ったドラコがバターンと倒れたのを横目に、私はキスの喪失感を味わっていた。


「すまない、レイノ」

「いや、私のせいだし、謝らないでよセブ」


 自分が自分にキスするなんて、どんなナルキッソスだよ……ジジイの馬鹿野郎!

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