輝々
セブが私で私がセブで・上

〜セブが私で私がセブで編〜

 就寝前の一時間、私はセブの部屋でゴロゴロしたり勉強したり紅茶を飲んだりしてる。今までセブが忙しくてあんまり会えなかったんだ、これくらいの公私混同は許してくれても良いだろ。ジジイが文句垂れてるが気にしない。

 そして今日は日曜日で、昼間から私は薬学教室にもぐりこんでいた。


「くはー、やっぱりセブの淹れた紅茶は美味しいね」


 ティーカップから伝導する熱で、冷えた指先が温かくなってくる。喉を滑る紅茶は内側からポカポカして、最近はめっきり寒いしぴったりだ。


「そうか」


 照れてるのかな、弾みそうな声を抑えてるっぽい。他人が聞いたら不機嫌そうだと勘違いするんだろうなぁ。


「一休みしたらまた片づけをするからな」


 魔法薬の入った瓶がそこかしこに積まれている。そう、今は掃除の真っ最中なのだ。魔力がかかると効果が半減する薬があるから魔法でチョチョイとしてしまうこともできず、仕方なく人力でお片づけですよ畜生っ! 掃除ごときが私とセブの時間を邪魔しおって。


「はーい。棚はもう移動させてあるから――あと一時間くらい?」

「ああ、この瓶を並べていくだけだからな。ラベルをちゃんと確認して入れるんだぞ」

「はいはい」

「返事は一回だ」

「うぃ、むっしゅー」


 机の上に空になったカップを置いた。さあ、あと一時間の頑張りだ、サクサク片づけるぞ!――と、やる気を出すため腕まくりしたその時。


「セブルス、レイノはここにおるかいのう?」


 扉の前にも薬は置かれてた。扉に押され、ガシャンと瓶がぶつかり合う音、割れる音。複数の薬が混じりあい、怪しげな色の煙が噴き出した――おいいいジジイィィィ!!


「レイノッ!」


 セブが私を抱き込んだ。薬草の匂いで胸がいっぱいだ。も、萌え! 身を挺して守ってくれるセブに九十萌えを送りまっする!


「おっと、すまんのう。今換気しよう」


 ジジイが空気を入れ替える呪文を唱え、私はつぶっていた目を開いた……


「ん?」


 視線が高い気がする。ていうか、なんで私は『私』を抱き込んでるんだ?


「んん?」


 私の首の下から伸びているのは――細身なのにしっかりとした筋肉がついた、どうみても――男の、体。


「レイノ、か?」

「セブ?」


 『私』が聞いてきた。私は『彼』か確認しようと聞き返す。


「中身、入れ替わったのか……」


 なんて、なんてステレオな展開だよ!

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