輝々疑わしきは罰せずと誰が言った
――寮の前の廊下はごった返し、後ろにいる生徒たちは前で何が起こっているのか分らぬままざわめいていた。
「通してくれ、さあ」
僕は首席だ何だと言いながら赤毛の青年が人込みをかき分ける。主席かどうかはこの場合関係あるのか? 彼にとってはあるようだから指摘するほどのことではないだろうが、なんというか――こいつは馬鹿かと他の奴に同意を求めたくなる。
「パーシーだわ」
「パーシー……ああ、ジニーの兄貴か」
「ええ。三番目に近い兄よ」
一番近い兄はあれで、二番目に近い兄たちはああで、三番目に近い兄はこれなのか。苦労が忍ばれるな……。
「誰か、ダンブルドア先生を呼んで。急いで」
皆が押し合いへしあいして何が起こったか見ようとした。オレは何が起きているのか知っているから別に見る必要もないと思ったが、ジニーには分るはずもなくオレはジニーを抱き上げた。
「キャッ?! シェーマス?!」
「出入り口で何か起きているみたいだ。すまないがジニー、何が起きているのか見てくれないか?」
「あ、ええ――分ったわ。ヒッ!!」
ジニーが息を飲んだ。ふるふると頭を振ってオレの頭に抱き着く。可愛いが胸が当たってるぞジニー。
「何があった?」
「肖像画が――肖像画がめった刺しにされてるのよ……!」
ゆっくりとジニーを下ろし、扉がある方を見つめる。全く、あの馬鹿犬は他に方法を思いつかなかったのか? グリフィンドール寮生に愛想でも振りまいて連れ込んでもらうとかの方法があっただろうに……まさかオレにそれを求めていた、とか? 冗談じゃない、あの犬男がどれだけ汚かったかを考えると怖気がする。綺麗にして食料を与えただけで満足してろ。
ダンブルドアが現れ、生徒たちが酢飯になって道を空けた。チラリとオレを見てきたが一体何のつもりだか。まさかまたあのクソジジイはオレを疑ってるのか? 馬鹿か。グリフィンドール出身のご自慢の脳みそは救いようがない程劣化したらしいな。
「ああ、なんてこと――」
ハーマイオニー・グレンジャーの悲痛な叫び声に顔をしかめる。ハーマイオニーは好きでもないが嫌いでもない――親しい知人というべきか? 身内に近い人間の悲鳴を聞きたいとは思わない。あの馬鹿犬、チキン抜きにしてやる。
「――フィネガン、君か?!」
とりあえず離れておけと、ジニーを連れて広間に戻ろうとしていたオレにハリーとロナルドの憎々しげな眼が突き刺さる。うわあこいつらウゼェ。
「ちょっと、何言ってるのハリー? シェーマスがこんなことするわけないでしょ!」
ハーマイオニーがハリーの腕を掴み否定するが、馬鹿二人は聞きやしない。ダンブルドアはと言えば――まさに救いようがない。
「何故オレだと思うんだ」
「君しかいないさ!」
「理由になっていないことに気付いているか? オレはジニーと一緒にいた。太った婦人を細切れにする理由も必要もない」
かの、有名で、正義の味方で、悪を打倒したヒーローであるハリー・ポッターが疑っている。それだけでどうしてここまでグリフィンドール生は馬鹿になれるのか是非聞きたいものだ。
「そうよ、私はずっとシェーマスと一緒にいたわ! 寮に帰りなんてしなかったんだから!」
昼間はホグズミードなど行く価値もないと思ったからスネイプ教授の個人講義を受け、夕方からはジニーといつもより豪華で味の濃い料理を烏龍茶で流し込んでいたオレが、どうして婦人を刻みに行けるというのか。さっぱり分らない。
スネイプ教授とマクゴナガル教授、ルーピン教授が走ってやってきたのを見ながら、早くピーブズが来ないものかと内心ため息を吐いた。
そして、かのハリー・ポッターからの謝罪はなかった。
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順位を見て、早々に書いたのがコレ^^「乙男……?」は人気だなぁと思いました まる
09/06.2010
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