輝々トリートが良いなぁ
「セブ! トリック・オア・トリート!」
セブルスは頬を緩めた。朝もまだ早いというのに、部屋の扉を勢い良く開けて転がり込んできたのは愛娘だった。今日返却するレポートの採点の手を休め、羽ペンを置いた。
「レイノはどっちが良い」
椅子を動かし、レイノが飛びつきやすいように向きを変える。跳ねる小物体は予想通りセブの膝に飛び乗った。
「セブに悪戯するとしたら、スキンヘッドにしてアラン・リックマンにするかー」
アラン・リックマンとは誰だ。
「サラサラヘアーにするかー」
セブルスは自分の髪に触れた。見た目ほど脂っこくない彼の髪だが、傍目にはベトベトに見えてしまう。それは果たして悪戯なのやら。
「もういっそのこと、髪の毛ピンクに染めちゃうとか」
全てが髪に関する悪戯なのだが、その理由を知りたいと思うのは駄目なのだろうか。
「んー、でも、セブからならトリートが良いや」
セブルスは笑んだ。娘を抱き上げ、机の引き出しから出した物を手に握らせる。大きさからいって本だろうことが窺えた。
「ハロウィンおめでとう、レイノ」
「おめでと、セブ」
親娘のハロウィンは穏やかに。
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