輝々言い方を変えた方が良いのだろうか
「ヴォルディー、何かくれ」
「貴様は年々言葉を飾らなくなってきたな」
溜息とともにそう言えば、鈴緒は目を丸くした。
「え? じゃあ小悪魔コスして『お菓子をくれなきゃ悪戯す・る・ゾ☆』とか言われたいの?」
「誰もそんなことまで言っとらんだろうが!」
「えー。じゃあこれか? いい年こいた中年女が、『お菓子をくれなきゃ(性的な意味で)悪戯するわよ』とか言えと?」
「その括弧の中身が不要だ!」
鈴緒に『ヴォルディー』という、もうこれでは元の名前の原型さえ留めていない愛称をつけられている男――ヴォルデモートは、額に青筋を浮かべた。
「注文の多い男だなー。そのうち体にクリーム塗りたくれとか言うんじゃないだろーな」
「何故そんなことを言わねばならん」
「注文が多いから」
手を突き出す女に、深くため息を吐く。杖を振って鈴緒の手の上に現れたのは、『珍魔法百選』という一冊の本。
「おお! 面白そう!」
「役に立たんものばかりだがな。こういうのが好きだろう?」
「好き好き大好き、超愛してるよヴォルディー。こういう時しかあんたと仲良くなった利点、ないしね」
ヴォルデモート血管が破裂した。
「鈴緒貴様ぁ! その本を返してもらおうか?!」
「やだプー!」
その後鬼のような形相で鈴緒を追いかける闇の帝王と、飄々として笑いながら逃げる鈴緒の姿が、屋敷の各所で見られたとか。
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