輝々
君にラブソングを…"High school act"

 コンビニで買ってきたかき氷のスプーンを口にくわえ、掃き出しの窓のところにぽつねんと座る。仗助の家に遊びに来るのはもう両手両足でも数えきれないほど……これでも一応幼馴染。高校生になったからって突然交流が無くなるような関係じゃない。まあ、付き合いが悪くなったのは悪くなったんだけどね。通ってる高校違うし。

 夏休みも後半に入った今日、コンビニで買ったアイスとかかき氷とかを手土産に仗助のうちを訪ねたら、仗助の友達って言う人達が来てた。康一くんとその彼女の由花子ちゃん、億泰くんの三人だ。特に康一くんと億泰くんとは無二の親友バリに仲が良くて……私は少し疎外感を覚えた。

 ぶどうヶ丘高校に行かなかったのは私の我がまま。ずっと私はアメリカへ留学したかったから、留学制度のある高校を選んだのだ。理由は単純――「天使にラブソングを」に憧れて。アメリカンドリームとはちょっと違う、でもアメリカに対する夢。

 この夏が終われば私はアメリカで一年間の留学をすることになってる。夏休みのほとんどは留学の用意で潰れ、今日はやっとできた休みだった。仗助と二人で話したりなんだりして過ごしたいなーなんて思ってたんだけど、仗助は康一くんや億泰くんとホースで水をかけあって騒いでる。

 これじゃ、来月から一年間日本にいないこと言えないじゃない。全く仗助め。

 康一くんの彼女が、康一くんから離れてこっちへ来た。隣良いかしらって言われて頷く。


「康一くん、素敵でしょう?」

「えっと……そうだね。性格も優しいみたいだし、これから大きく成長しそうな感じ?」


 これから成長期が来て筍みたいにニョキニョキ伸びるんじゃないかな。そう思って言えば、私の隣に腰を下ろした由花子ちゃんは大きく頷いた。


「そうなの。康一くんは輝くものを持っているわ――だから私が康一くんをサポートしてあげて、康一くんをより素敵な人にしていくつもりなの」


 まだ挨拶と自己紹介しただけの間柄だから康一くんの内面なんてさっぱりな私だから、由花子ちゃんのリキの入った言葉が少し驚きだった。気弱そうに見えたんだけど、違うんだ? 恋人の欲目ってのがあるとしても、さ。


「私は康一くんが好き。――麻衣さん、貴方は仗助くんのことが好きなんでしょう?」


 かき氷の器を落とした。まだ半分残ってたとかそんなのはどうでも良い。なんで分ったんだろう……私、そんな分りやすかったかな。


「顔に出てた?」

「ええ。貴方が仗助くんを見る目は恋してるそれだわ。でも彼は気付いてないでしょうね、男の子ってそういうの鈍感ですもの」


 由花子ちゃんの言葉にがっくり項垂れる。そうなのだ。朋子さんはとっくの昔に私の気持ちを知ってるのに、仗助はさっぱり気付いてくれない。全く鈍感で嫌になる……私はけっして見るに堪えない顔や体格をしてないと思うし、仗助とも相性が良いはずだ。相性が悪かったら幼馴染なんてしてないもん。

 でも仗助が私を見る目はただの幼馴染を見るそれだから、告白しても玉砕するのが始めから決まってるんだよね。

 仗助たちがパンツ一丁になって騒ぎ始めた。なんで私、仗助なんか好きになったんだろ。あんな馬鹿なのに。


「仗助には秘密にしておいてくれる? あいつから告白して欲しいんだ、私」


 由花子ちゃんはもちろんよと頷いて、私の恋心を応援すると言ってくれた。

 で、結局。由花子ちゃんには一年間日本にいないことを言ったけど、仗助には言えないまま渡米となった。冬休みに仗助が「アメリカに来たから会いたい」って突然連絡してきた時は告白しに来てくれたんじゃないかなんて乙女チックなことを考えた。考えたんだけどね。


「すまねー、あの時このこと言おうとして来てくれたんだよな? 無視しちまって本当にすまん」

「……うん、良いよ別に。私だって、他にも留学のこと言う手段があったのにそれをしなかったわけだし」

「そーか! なあ麻衣、ここらへんで便利な土産物屋知らねぇか? 康一たちに土産買って帰るって言ったからさ〜」


 満面の笑みを浮かべる仗助。ふうん、謝罪だけ。へー、そうなんだ。期待した私がばかみたい。一気に仗助が憎たらしく感じられて、私は思いっきり仗助の足をふんづけてやった。





 留学を終えて帰国した私の元に仗助はかき氷とアイスを持ってやって来て、久しぶりに二人でゲームしようぜって笑った。

 そしてゲームの前に二人で掃き出しの窓のところに座ってかき氷を食べてたら、ぽつんと仗助の一言。


「お前がいない日本はつまらね〜ぜ」。

「あ、そう」

「だからよォ、麻衣。お前はおれの隣にいろ」


 手からかき氷が落ちた。隣を見やれば、照れてるのか赤い仗助の横顔。


「……返事しろよ」

「…………うん、うん……。ずっと隣にいる。おばあちゃんになっても隣にいる」


 垣根の向こうで億泰くん達が仗助に親指を立ててるのは、見なかったことにしてあげよう。








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Refrainの暁紅葉様主催の企画『ジョジョ夢企画』に参加させて頂いた物。僕には珍しく恋愛要素が強いです。
2013/09/01

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