輝々愛は選別する
知ってるかな? 神様っていうのはね、実はとっても意地が悪いんだってこと☆
「ねえ、ヒソカ?」
「ンー? どうしたんだい☆」
天空闘技場の近くにある、とあるケーキ屋。甘いもの好きなもう一人のボクが前から来たがっていたこの店に、今はボクともう一人が向かい合って座ってる☆ この世界へ落ちてきたとか自称してる彼女――名前はなんだったっけ? 思い出せないや。どうでも良いっていうか、邪魔な存在でしかないしね☆
彼女にまとわりつかれて二週間、ボクは頑張ったと思うな☆ もう一人のボクが「女の子と同伴だったらケーキ屋巡りしやすいから殺しちゃ駄目! こんな子でもないと同伴してくれるような相手っていないし!!」って騒いだから殺さずに機嫌を取るような行動をしたけど、そろそろこの子の相手をするのが面倒になって来た☆
もう一人のボクは毎日のようにケーキ屋で好きなケーキを食べられることを喜んでて、ボクももう一人のボクが喜ぶならと我慢した――でも、もう飽きちゃったんだよね☆
「ケーキ屋さん巡りも良いけど、どっか遊びに行こう? デートしよ?」
「デートね☆ 今からかい?」
「もう四時だよ? 明日ね、デート! 約束だよ?」
自分の容姿が優れていることを知って利用してる女は嫌いじゃないけど、なんだかなァ……☆ この女が実年齢よりも若く見える人種だってことはもう一人のボクから聞いてるし、十七歳だってことも本人から念を押された。でも、ボクからすれば十三歳か十四歳の子供が、阿婆擦れ染みた格好をして頑張って色気を出そうとしているようにしか見えないんだよね。必死になればなるほど哀れになる☆
「分ったよ☆ なら明日の十時に闘技場の前で☆」
「うん!」
もう一人のボクは利用料だと言ってこの子のケーキ代も出してるのを、きっとこの子は「自分が可愛いから奢ってもらってる」とでも思ってるんだろうね☆ もっと年齢相応な格好で子供らしくしてたらそれ相応に可愛がったかもしれないけど……背伸びする方向を間違えた彼女とアレコレしたいとは全く思えない☆ だってさ、今どき年若い娼婦でもこんな恰好はしないよ?
内心を悟られないように笑顔を貼り付けて別れの挨拶をして、すぐに自室へ帰る。部屋の中なら好き勝手出来るし――今すぐシャワーを浴びたいし。もう一人のボクはプライバシーがどうとか言って、ボクがシャワーを浴びる時は深いところに沈んじゃうのがちょっと残念。
服を脱いでシャワーのコックを捻る。湯は髪を滑り肩を濡らし、それからじわじわと髪に染み込んでいく。
『君も大変だね、あの女の子の相手をしなきゃいけないんだから』
――だから、もう一人のボクに聞かれたくない話をするのはシャワーの時って決まりがある☆ 話しかけてきたココの言葉にため息を返す。
「そう思うなら代わってくれないか☆ ある意味でアレは拷問だよ☆」
『だろうね』
『ムカつくならさっさと咬み殺せば良いのに』
『ヒバリ、ママンのケーキ屋巡りの予定を何度も潰したオメーがそれを言うのは間違ってるぞ』
『リボーンの言う通りよ。貴方はただでさえ血を浴びやすい攻撃スタイルなんだから、もう少し返り血を浴びないように工夫しなくっちゃ』
「――まあ、もう一人のボクのケーキ屋巡りを断念させた回数が一番多いのはボクだけどね☆ だからこそこの二週間ガマンしたんだし☆」
返り血がボクの肌を鮮やかに彩るのが好きだし、時間と共に黒ずむのも好きだ☆ 噴水みたいに血が噴き上がる姿にはとっても興奮する☆
「明日だ☆ 明日からはまた身軽になれるよ☆」
『お袋にそれは言ったのかよ』
「まぁだ☆ でもボクの我がままならもう一人のボクは怒らないし☆」
『お母さんも、私になってくれれば味覚なんていくらでも繋げるのに……』
『そりゃお前が不運だからだろ。お前の姿でお袋がケーキ屋にいけたためしねぇじゃねーか』
『ひ、酷い……! そんな言い方しなくったって良いじゃない!』
『でも、私がケーキ屋に行くことは時々あるものね』
『ビアンキさん!?』
「――そろそろ静かにしてね☆ もうシャワーから出るから☆」
騒がしい住人たちに黙るよう言い、心の奥深くにあるもう一人のボクの部屋のドアをノックする。ドアの向こうから気楽な声がし、足音が近づいてくる。
「クックック……明日は楽しいパーティだ☆ 楽しみだね☆」
六人から賛同の返事が上がる。ああ、明日が楽しみだ☆
+++++++++
女の子がトリップ者である設定がほとんど活かされてないという……。遅くなってすみません。schlange様のみ持ち帰り可、書き直しも受け付けます(汗)
11/20.2012
- 130/133 -
pre+nex