輝々
それこそが大いなる愛なのだ

 南瓜って江戸時代に入ってきたはずだよな。何であるんだろうな――BASARAだからか。

 南瓜の本体は数日前に醤油で甘辛く炊いておやつとして食べたんだが、あれは父上にもかなり好評だった。現代日本でオレたちが食べている野菜のほとんどは掛け合わせや遺伝子組み換えによって味・大きさ・病気への抵抗力等が改良されたもので、この時代の野菜はかなり残念な味だ。例を上げるなら林檎だろうか。現代で言えば紅玉がこの時代の林檎に近く、酸っぱいし小さい。日本のお百姓さんは本当に頑張ったんだなぁとしみじみ思ったね、うん。

 本体はおやつに消えたけど、南瓜は種も食べられるのだ。グラノーラとかに入ってるんだけど、ナッツっぽくて美味しい。というわけで、南瓜の種から繊維を取り除いたらだいたいお茶碗二杯くらいの量が取れたし、南瓜の種のおつまみを作ることにした。

 ゴマ畑を増やしたお陰で、城の厨房にはゴマ油が当然の様にある。今回のおつまみ製作では香ばしい香りが付いて食欲増進効果があるだろうということでゴマ油を使おう。現代で作った時はオリーブオイルだったんだけどね……。手に入れようとしたらザビー教に渡りを付けなきゃいけないのがちょっと腰が引けるって言うか。

 さて。殺菌のつもりで一旦茹でてから天日干しで乾燥させたこの種を、先ずは油をしいた平鍋――フライパンの絵を描いてこういうのが欲しいと注文したら、平鍋ですねと言われた。なんか違う気がする――に入れて炒める。種がこんがりきつね色になってきたら塩と胡椒をふりかけて終わり。あちちでも美味しいけど冷めてからの方がおやつとしてヒョイパク食べられる。

 昔から厨房に通っていたし、今だって一度も咎められることなく料理が出来た。出来たんだけど、オレが何を作ってるのか興味深々だったらしい厨房の全員が、じーっと南瓜の種のおつまみを見ていた。


「……食べる?」

「はい!」


 七人いる全員が笑顔で頷いた。父上にも持って行って差し上げたいからそんなに上げられないけど、ちょっと摘まむ程度には配れる人数だ。そうだ、松山にもあげよう。松山にはいつも世話になってるしね。


「松山」

「――はっ!」


 天井からスターンと現れた松山の目はキラキラしてる。盲目的に信仰されてると気付いたのはいつだっただろう? 何をしても「流石若様!!」とか「若様は素晴らしくていらっしゃる!」とか言うもんだから、最初はそういうポーズなのかなって思ったんだけどね。だってほら、次の雇い主はオレになるわけでしょ? だからオレにゴマスリしてるのかって思ったんだ。でも松山の目を見たらそんな考えは吹っ飛んだよ……狂信者の目だったから。あんまり目がイッてたんでビビって悲鳴を上げてしまったのは、なるべくなら思い出したくない記憶だよ。


「お裾分けだよ」

「有難き幸せにございます!!」


 キラキラの笑顔で、たった一摘まみの南瓜の種に喜ぶ松山。喜んでもらえて嬉しいけど、ちょっと過剰だと思うんだ。


「では、父上に差し上げてくるよ」


 父上には出来たてと冷めたものの両方を食べてもらいたいから急がないと。この時間なら執務室で書類を片してるはず。片手でパパッと摘まめるコレは小腹満たしに最適じゃないかな? あ、でも指先がちょっと油っぽくなるから一々拭わないと書類が汚れるよね。


「指先を拭ける布巾はない? 父上は紙を触られるから、油が付いた指を拭わないと」

「若様は先に殿の元へ行かれませ。後から持って上がります」

「そう? 有難う」


 松山は笑顔を残してその場を消える。松山のことだから、父上の執務室へ着くまでに帰ってくるだろう。

 その通り廊下で手拭きを受け取り、父上のいる執務室に廊下から声をかけて入った。


「これは何だ?」

「南瓜の種を油で炒め、塩で味付けしたものです」


 おつまみにどうぞ、と差し出せば、父上は不思議そうにしながら南瓜の種のおつまみを口に放り込んだ。


「ふむ、美味い」


 そう言って微笑んだ父上に、実はと話す。


「今日は南蛮のハロウィンという行事のある日で、南瓜を食べたり飾ったりするんだそうです。収穫感謝の祭ですから父上にも差し上げたくて」

「ほう」


 お化けの恰好をした子供が「悪戯かお菓子か」と言って回るこのハロウィン、元は新嘗祭と同じような意味合いを持つ行事だったんだよね。だから、今年の収穫に感謝して。


「ならばそうだな……今日は、国を挙げて日輪に感謝を捧げる日と定めるか」

「えっ」


 オレの疑問の声も意に介さず、父上はスパァーンと障子を勢い良く開く。そしてキラキラした表情で采配を掲げ語り始めた。……父上?


「そなたは昔言ったな、野菜が育つのも人が生きておれるのも、全て日輪があるからこそだと」

「ええ、まあ、はい」


 父上は目を細めて日輪を見上げる。


「ならば、豊かな実りへの感謝は日輪にこそ捧げるべきであろう。この年より、今日この日は日輪への感謝を捧げる日とする!!」


 輝く笑顔の父上を誰も止められず、次の年からは毎年十月の三十日を収穫感謝及び日輪礼拝の日となってしまった。父上帰ってきて、正常な父上戻ってきて!




+++++++++
大いなる愛=日輪という決着。収穫感謝を、父上の思考回路は日輪感謝に話を変えてしまったのだ!! 湖乃華様のみお持ち帰り可^^
10/20.1012

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