輝々もう涙は出ないの
横で荒い息が聞こえる。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ……と。時々舌なめずりの音まで聞こえてくるからもの凄く怖い。受付台の影で足はガクガク震えてる。支配人助けてください。この変態とシフト同じにさせた犯人は誰なんですか教えてください、今すぐヒソカさんに締めあげてもらいますから。
「ユキちゅわん、これっ、これっ! ホワイトデーだから奮発しちゃったんだ☆ 絶対ユキちゅわんに似合うよ、着ようよ☆ ね?」
ゴスロリを手にした変態が、それを私の背中に押しつけてくる。そこらへんのホラーよりも怖くて泣きそうだよ。
「無視……放置プレイなのね! ハァハァ良いよ、お姉さん超興奮しちゃうよォホホホ! それとも恥ずかしくてこっちを向けないのかな? やだユキちゃんってばくぁわいいんだからぁ」
気色悪い。気色悪い気色悪い気色悪い。
「ピンクのゴスロリから覗くユキちゃんのぷにぷにした生足……ナメナメなんて、ぬふ! 怖くないよ痛くないよ」
這い上がる嫌悪感に背筋が震え、それを良い方に勘違いしたド変態の独り言は続く。
「ユキちゃんはマゾなのかなぁ、うへへ、言葉攻めが好きなんだね! それだと私と相性良いよ、うへへ、うへへへへへへへ」
支配人に頼んで付けてもらったもう一つの非常用警報装置――それを迷いなく押す。元からあった警報装置は机の真ん中にあり、受付員のどちらでも膝頭でこっそり押せるようになっている。それを私の座る席にも取り付けてもらったのだ。
バタバタという足音と共に現れる警備員さんが、私を襲っているエミリーを確認するやいなや私の両脇を持って救出&エミリーを押し倒して確保した。
「ああっこんなところで公開プレイだなんてっ! でもごめんなさい、私の愛はロリショタにしか向けられないの! 十五歳以上はお呼びじゃないの、ふへへ!」
そう大声で言いながら身をくねらせるエミリー。もうこの子はどうしようもない……エミリオさんみたいに性犯罪の道を突っ走ってしまうんだろう。
「エミリー……」
涙声がすぐ近くから聞こえて見上げる。よくよく見てみれば、私を救出してくれたのはエミリーの元カレだった。
知ってて付き合ってたなら救いようがある。でもこの様子を見るに、彼はエミリーの変態性を知らなかったんだろう。可哀想に……私も可哀想だけど。
「あの、有り難うございました」
持ち上げられたままお礼を言えば、彼は目を丸くしたあと慌てて私を下ろしてくれた。確か彼はまだ二十歳になってないってエミリーから聞いたけど、私には彼が二十代後半にしか見えない。
「あの、ごめんな。エミリーの奴が迷惑かけて」
「いえ、貴方が謝ることではありませんし」
「まあそうなんだけどさ」
彼は頭を掻きつつ言った。
「オレはまだあいつのこと好きなんだよ、まさかあんな性格だとは思わなかったけどよ。そのせいで仲間からゲテ物喰いって言われてんだ」
エミリーの本性を見てもまだ好きだといえる彼は確かにゲテ物喰いなんだろうと思う。でも。
「優しい方なんですね。エミリーも貴方の優しさに気付いたら良いのに」
エミリーを見捨てない彼はとっても懐が深くて優しい。私はとっくにエミリーなんか見捨てたもの。
「ヨリ、戻せると良いですね!」
彼はちょっと泣きそうな顔で、うん、と頷いた。
――感動的なシーンのはずなのに、なんでだろう? 暴れないように縛り上げられてるエミリーがハァハァ言ってるのが全部をぶち壊してた。
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酷い内容……書き直し受け付けるよ! リク主ってか始秋っつぁんのみ持ち帰り可^^
2012/03/21
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