輝々
(後)

 パクがオンにした盗聴器――その受信機から流れる音声に愕然とした。なんだと……!?


「うわぁ……」

「はっ!」


 シャルは笑い方を忘れたような表情でオレを見やり、当のザンザスはといえばオレを馬鹿にし鼻で笑った。ノブナガやウボォー達はいつものことだと、もはや反応すらない。


「どうやら貴様とは一度、きちんと話し合うべきらしいな」

「対象にすら見られてねー奴が大口叩くんじゃねーよ」


 フィンクスが小さく噴きだす声が聞こえた。あいつはどうやら命が惜しくないようだ。


「親友止まりが何を言う。貴様はオレがマチと結ばれるのを、指をくわえて見ていろ」

「ハッ! 残念だったな、マチのハート型のチョコレートはオレのもんだ。悔しければ親友になれるよう努力したらどうだ」

「愛がこもっていなければ形など関係ない! ……あ」

「コイツ、自爆しやがった……」


 自分の放った言葉ながら、それはオレの心を深く傷つけた。シャルがフィンクスに寄りかかって痙攣している――どうやらあいつも五体満足な明日を迎えたくないらしい。


「形は大事だ、形は――ザンザス、貴様にだけはハート型のチョコレートは渡さん。貴様の口に入る前にオレが処分してやる!!」

「団長大人げないね」

「みっともねーぞ」

「うるさい、オレも必死なんだ」


 コルトピとノブナガが呆れたように言ったが、今日のオレは切羽詰まっているのだ。

 その場を離脱してマチの気配がある方向へ駆ける。そのすぐ後ろをザンザスが追ってくる。


「邪魔をするなザンザス」

「テメーこそマチのチョコレートがオレの口に入る邪魔をするんじゃねぇ。死ね」

「貴様こそ死にさらせ。マチのハートはオレが手に入れる」

「テメーみたいな奴をマチの恋人に許すわけねーだろ。親の腹からやり直して来い」

「貴様こそその凶悪な面をどうにかすればどうだ。極悪人にしか見えん」

「オレはこれで良いんだよ。その軟派な面に傷の一つでもありゃまだ見えたもんになるんじゃねーか」

「マチが心配してくれるなら傷の一つや二つ作るのも良いかもな」

「ハッ! テメーの未熟さが分るだけだろ」


 初めはマチを迎えに走っていたはずが、いつの間にか手が出て足が出て――周囲にクレーターをいくつも作る喧嘩と化していた。




 ハート型のチョコレートの末路は――そうだな、全員で分けて飲んだとだけ言っておこう。











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 あれはホットチョコレートになったのだ。始秋っつぁんのみ持ち帰り可ー^^
2012/02/23

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