輝々その味は苦く甘く
クロロさんに拾われて数カ月――年を越し、二月に入って十日が過ぎた。修行が休みの日に街へ繰り出せば商店街はバレンタイン一色だった。
「うわぁ、チョコレートばっかり!」
クロロさんは三日程出かけると言って、多少のお金を置いてどこかに行ってしまった。今回はノブナガさんも用事があるそうで来られないとのこと……一人でお留守番。なんだかドキドキするね。実は二人にバレンタインのチョコを用意するつもりだったから、用事があって良かったと思ったのは秘密。
一週間のおやつ代をチョコレート代に回せば五百ジェニーが浮くし、その前からおやつ代を節約して貯めていたから千ジェニーが私の手元にある。既製品を買うのは無理――クロロさんにチロルチョコを渡せるわけがない。これでも毎年バレンタインシーズンには手作りの友チョコを配り歩いていたのだ、手作りで決定! 作るのはトリュフにしよう。去年作ったから作り方はまだ覚えてるからね。
二百グラムで七百ジェニーというかなり高価なチョコを買った。お酒も入れるけどクロロさんの飲んでる、普段呑み用百年もののブランデーを勝手に使うことにしてるから買う必要はない。……クロロさんはガバガバ飲んでるみたいだけど、これって百万ジェニー以上するよね。まあ良いか、私が気にすることでもなし! ココアパウダーは家にあるヴァンホーテンのを使うつもりだし、あとは生クリームがあれば十分。
スーパーで生クリームを買って、さあ作るぞ!
鍋で生クリームを熱し、ふつふつと沸騰しそうな気配がしたら火を消して砕いたチョコレートを投入、シリコン製の柔らかいヘラで混ぜながら溶かす。荒熱が取れたそれを生クリームのパックに付いていた絞り袋に入れてクッキングペーパーの上に約三十等分して放置。ここらへんは緯度が高くてまだ寒いから、台所に置いておくだけですぐに冷える。
冷めたチョコを手で丸めて、また放置。手の熱で表面が溶けちゃうからね。それで十分程置いておいたものにココアパウダーをまぶして完成。でも三十個って案外多いんだよね……どうしよう。
「あれ、クロロそれどうしたの?」
「もらった。お前たちにも差し入れだ」
つい昨日まで久しぶりに数日かかる仕事だったから、寝不足や達成感もあってまだ誰も帰ってなかった。ただクロロは養い子がいるとかで早々と帰った――はずだったんだけど、何故か次の日引き返して来た。手にタッパーを持って。
「わあ、なになに? ってトリュフじゃん」
タッパーに入っていたのはトリュフだった。
「養い子がバレンタインだと、な。最近おやつを買ってないなと思えば、チョコレート代を貯めていたらしい」
「へえ、良い子だね」
他の奴らが酒を盗りに行ったり仮眠をとったりしてる中、オレはジャンケンで負けてひとりぼっちだった。これって役得? 全部食べちゃって良いわけ?
「うまっ! 良いチョコレート使ってるじゃん!」
「ああ、美味い」
クロロの分と、その養い子と会ったことがあるノブナガの分は別個の箱に入れられていた。タッパーにある分はオレたちの分だって。――全部食べちゃおうかな。
「一人一つは残しておけよ」
「うー、うへーい」
――その任務に、ヒソカは参加していなかった。
知ったら殺される気がするからオレたちは口を噤み、早く見つかると良いねとだけ口にした。ヒソカがユカリのチョコレートを口に出来たのはその二年後の話だ。
リクエスト者様のみ持ち帰り可^^でも報告くださいね〜^^
2012/02/17
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