シーザーなのはサラダだけで十分 | ナノ
その2.今すぐ転職を希望します
それは、トーマスのとある一言が発端だった。
「ところで、政局も安定してきたし――そろそろオカルトGメンと顔合わせした方が良くね?」
「――は?」
口をあんぐり開けて見つめる俺に合点がいったのか、トーマスは一つ頷いて説明を始める。
「まあ、オカルトGメンはマグルの組織だからな、お前が知らなくても仕方ないよ。悪霊や悪さをするモンスター退治の専門職を束ねる組織だ。マグルの間じゃゴーストスイーパーは有名だぞ」
「チムニースイーパーじゃなくて、ゴーストスイーパー?」
「煙突掃除と一緒にされたら流石にGSも怒るぞ。本人達の前ではソレ言うなよ」
待て待て、待て。GSって聞いたらあれしか思い出さんぞ、横島忠夫とか美神令子とかルシオラとかアシュタロスとか! 嘘だろ、誰か嘘だと言え。言えよ!
「魔法はやっぱり秘匿されるからな……現代の魔女狩りなんてなったら目も当てられないし。ま、その緩衝役がGSやオカルトGメンの皆さんだ。彼らのおかげで魔法が受け入れられる基盤ができつつある」
トーマスの言葉に頭が混乱してきた。ここってハリポタの世界のはずだろ? え、もしかして創作物は全部同じ世界で進行しているとかってことはない……よな? 日本の室町時代が忍たまの世界で――なんてことはないよな? 誰かそうだと言ってくれ。
「マジか……ゴールデンタイムに極楽に逝かせてくれる美神さんが存在――ありゃ八十年代から九十年代か。まだ千九百三十六年だしな、卵さえ存在しないだろ。うわぁアシュタロス戦とかマジで無理なんですけどぉぉ手伝った方が良いんだろうか面倒くさい」
俺は面倒くさいと思うと日本語で呟く癖があり、それが人には喃語に聞こえるらしい。
「おい、どうしたのイネス君。また恒例の幼児退行? 喃語出てるよ」
「退行してない!! 喃語でもない!」
「なら人の話を聞け」
トーマスに頭を叩かれ、空気を変えて話を戻す。
「で、だ。そのオカルトGメンリCEOのリチャード・パフと顔合わせする日程だけど――明日で良いよな」
「え、向こうの予定は大丈夫なのかよ」
「何言ってんだ、イギリスのGSは他の国に比べて仕事が少ないんだぞ。元々妖精やモンスターと身近なわけだし、悪霊の除霊よりも幽霊との茶会の方が多いくらいだ」
「なにそれ、そんな楽しい仕事あるんだ!?」
「他の国では違うそうだがな」
そんな……そんなことなら、俺はGSになりたかった!
「今から転職する!」
「阿呆か、お前以外に誰が魔法大臣するんだよ」
「親父!」
「This is 最高にちょうど良い妙案!」と叫んだら、呆れかえった目を向けられた。
「本当の独裁になるけど、それで良いのかよ」
「――ごめん、俺が悪かった」
親父が魔法大臣になんてなってみろ、十数年早い闇の時代の到来だ。ガクリと肩を落とした俺にトーマスは小さく笑う。
「んじゃあ、明日にで良いよな? どうせ明日でも明後日でも忙しいことに変わりなんてないんだし」
「言うなよ虚しくなる」
肘を突いて手を組み、最近急激に視力が落ちたから慌てて作った眼鏡を押し上げる。この時代の眼鏡マジでダサいし重い。その代わり光の反射もお手の物だけど。
「冬月! というわけで明日の予定を組んでおけ」
「それくらいは自分でしたまえ、碇君」
「チッ! 役に立たないな冬月」
「元ネタを教えてももらえないのにノってやってる俺に言う台詞かよ、それ」
トーマスに軽く叩かれて重たい眼鏡がずれた。
「と、とりあえず明日な。明日の予定組んどく」
不安ばっかりだけど、とりあえず会えば良いんだろ会えば。暇そうな職場だったら呪ってやろう――こっちは呪いの専門職だからな。
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短いorz
2012/03/05
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