シーザーなのはサラダだけで十分 | ナノ

その1.人生はままなりません

 なんで俺はリアルジュリアス・シーザー――日本人からしたらユリウス・カエサルのが耳に慣れてるけど――なんてしているのだらうか? 杖先でグサグサ刺してくるルート君に痛い思いをさせられながらそんなことを思う。いや、理由も原因も分かっているんだよ? だがアレだよ、不本意なんだよ。

 机に山積みされた書類が遅々として進まず減らないのを見てルート君が仕事しろと煩いけど、もう一度だけ言わせてくれ――どうしてこうなった?



 一度目の人生は平凡を絵に描いたようなものだった。流行りに流されて某外国文学の波に揉まれ、原作の愛読者な幼馴染みに付き合って映画館で字幕スーパーを見て、見に行ってから一週間もすれば内容を忘れた。

 小学生の頃に始まった波は大学二回生で収まった。映画版がやっと完結したからだ。俺は三巻で読むのを止めていたが、幼馴染みは七巻まで読んで「スネイプ先生が死んだぁ!! ローリング先生の馬鹿ぁぁぁぁ!!」と……わざわざ俺の部屋に来て暴れてくれた。ベッドのスノコがそのせいで壊れたんだが、もちろん弁償なんてなかった。代わりにおばさんが二万くれたけど奴からは謝罪もなかった。まあ幼馴染みっていうのはそんな理不尽なものだ、甘酸っぱいラブストーリーなんてギャルゲの中だけの幻想なんだよ。

 話は変わるが、俺が所属しているのは経済学部とか法学部なんて就職率の良い学部じゃなくて文学部の英文学科だ。将来の夢は同時通訳だから後悔はないんだが、先輩方の低就職率を見るにつけ聞くにつけ進路を誤ったんじゃないかと不安になる――これって後悔って言うのか? まあ良いや、細かいことは気にしない。だが、この英文学科を選択していたことが俺の身を助けることになるとはその時の俺には想像もできないことだった。――だってさ、二度目の人生があるなんて普通誰が思うよ?

 本土一暑い気温を記録したことがあるくせに近年の気候の変化のせいか雪が降った大阪府枚方市。タイヤチェーンなんて持ってるわけがない俺は、凍結した路面をチェーン無しで走り……スリップ事故を起こして電柱に激突&炎上、そして死亡。そして精神と時の部屋に行くこともなく補佐官に頭が上がらない閻魔大王の元に行くこともなく、俺は気づいたらイギリスで赤ん坊やってた。同時通訳を目指していたのは本気だったし、リスニングもイギリス文化の知識も勉強に勉強を重ねてきたのは伊達じゃない。ハリポタに興味がなかっただけでイギリス映画とか文学とか観たり読んだりしてきたし。ただな、同時通訳頼む人は通訳に聞き取りやすいように話してくれるんだよ。映画だって俳優さんたちの滑舌は良いんだよ。クィーンズイングリッシュ? モゴモゴ発音されたら意味ないし美しい英語とかファンタジーだし……いや、ファンタジーって言い切るのはおかしいか。言い直そう。美しい英語を話す人は、少ない。家にいる屋敷しもべ妖精は文法ミスの塊で、今の親父の英語は謙遜語・丁寧語を皮肉を言うとき以外に使ったことがない。母親は更年期障害かヒステリーか生まれつきか、ほぼ悲鳴しか上げない。――二度目の人生はなんとも斬新だ。マジで半端ない。

 あ、そうそう。二度目の人生の舞台はハリポタだった。しかも父親は純血主義者達のリーダー格で、ブラック家と五世代前に分離したネス家の家長。最近は資金面・政治的発言力共にブラック家を追い越してしまった分家筋である……闇の魔法使いとしてタイーホされてアズカバンに放り込まれる未来予想図が燦然と輝いているんだが、俺はどうすれば良いの。





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 皆の反応が良かったので、電車内で書いた。パスポートもろてきたどー!!
 え、パスポートにICチップなんてあったの? 2006年から? 知らんかった(´・ω・`)
2012/02/28
 二話からの内容がアレなので、分離
2012/02/29



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