Star Dust






 新学期二日目のロックハートの授業はサボり――ってスルーできたら良かったんだけど、悲しいことに必須授業。それに、なかなか真面目で良い子ちゃんな私が授業をエスケープできるわけもない。自分で良い子ちゃんって言うのもなんだ……うん、アレだね。お馬鹿ちゃんみたいな感じがするね。

 する意味があるとは思えないロックハートの著書は読みましたか試験を終え、ロックハートのやけに気合いの入った羽根ペンが丸付けに揺れるのを見ながらため息を一つ。好きな色は蛍光マーブルって応えておいたけど、正解でも不正解でもどっちでも良いや。


「授業第一回から先行きが不安だな」

「何言ってるのドラコ。この程度で不安になってたらこれからやっていけないよ?」


 肘を突いて手の上に顎を乗せたドラコが口元を歪めながら言った。何を言うやらドラコさん、これはまだマシな方なんだよ――これからどんどん悪化していくんだから。


「まあ……そうだろうな。このテキストを騙ったライトノベルには苦笑いさえ難しかった」


 私とは反対側の隣に座ってるパンジーがあくびした。


「狼男をこんなに簡単に退治できたら、この世から狼男なんて根絶してるさ」


 ドラコは重たい思いをさせられて持って来たテキストを杖先で叩き、呆れを隠さず肩を竦めた。うん、来年教壇に狼男が立つから、今のうちに狼男について調べておくと良いかも――あ、やっぱり駄目。ドラちゃんがルーピン先生の病気に気付いたら大声で触れまわりそうだもん。


「残念ながら満点の方はいないようですね……誠に残念です。グリフィンドールのグレンジャー嬢は、まるで私自身が答えたかの様な完璧な解答をしてくれたのですが」


 スリザリンの空気が硬化した。あーあーあーやっちゃったー、グリフィンドールと比べちゃうとか絶対したら駄目なのにねー。てかロックハートってホグワーツ出身なの?


「……パンジー、レイノ、アメリア。あのナメクジを痛い目に遭わせるにはどうすれば良いと思う?」

「塩でも振りかければ良いと思うわ。そうね、五十キロくらい」

「湖のイカの餌とか、どうかしらねー」

「おい止めろ、ボケ役は私でツッコミが皆だろ。餅つけ、餅つくんだ!」

「心配ないわ。これからはジャケットもブックカバーもリバーシブルの時代よ」


 やう゛ぁいみんなやう゛ぁい。今まで築き上げてきた個性を殴り捨ててるよ!?


「それに、教師をナメクジ扱いは駄目だと思うのだよワトソン君っ」

「所詮男は誰もがナメクジだ」

「開き直り駄目ゼッタイ」


 コソコソと言い合いしてたら、いつの間にかピクシー妖精が教室内を乱舞してた。アメリアが盛大に舌打ちして妖精の腹を杖先でぶっ刺したんだけど! アメリアさん止めてください、ぽややん天然微腹黒なアメリアに戻って! 王蟲よ森に帰れ!!






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 イギリスには「男はナメクジ、女はシナモンなどの良い香辛料」という言葉がだな。
2013/03/21

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