Star Dust






 新学期が始まった。朝食の席でコレットちゃんが年上の男の子に絡み付いているのを見てパンジーに何アレって聞いたら、つきあい始めたんじゃないのって言われた。見れば分かるよ。だけど、聞きたいのはそれじゃないんだよ?

 しょっぱい気持ちになりながら先に来ていたドラコ+αの横に座る。南瓜ジュースは冷製スープだと思って飲めばイケたからほんのちょっと。サラダとソースが運良くかかってなかったローストビーフを一枚と、ベークドポテト。肉っ気はシシー神様のサンドイッチを待たないと。


「おはよう三人とも。昨日の予言者新聞は読んだかい?――読んでないのか。空飛ぶフォード・アングリアっていう素敵な記事さ。これは今日の分だけどね」


 ドラコは朝刊をテーブルに広げ、私たちは食事に夢中なデブ二人はとりあえず横に置いといて新聞を覗き込んだ。


「『空駆けるアングリア』、素晴らしい見出しだな。誰もが目を止めるだろうよ。『ロンドン市内で二人のマグルが空飛ぶアングリアを見たと証言』……市外でも目撃の証言が四人五人。父上によるとこの犯人はポッターとウィーズリーだとか。よっぽど我らが親愛なるポッター氏は魔法界を危険に晒したいらしい。魔法界の英雄どころか、魔法界一の大犯罪者じゃないか。魔法省は何してるんだ? あそこに犯罪者がいるってのに捕まえに来ない」


 ドラコは苛つきを隠さず顔を歪めた。気持ちは分かるから何とも言えないね、これ。ヘドウィグ見て梟便を思い出しても良かっただろうに……特にロン。魔法使いの家庭に育ってるんだから思い出すべきだった。


「だからマグル出身者って嫌なのよ、危機意識が低いのよね。魔法は素晴らしいって言うばかりで危険性について全然考えないんだから」

「マグル出身者はイートンとかの底辺校で一般常識から身に着けるべきさ」


 ヨーロッパの中で特に伝統と格式ある魔法学校は四つで、その一つがここホグワーツ。対して、歴史が浅くて名前もあんまり知られてない魔法学校なら確か二百校近くあるはず。イートン校は決してレベルが低い学校じゃないけど、どうしてもホグワーツに比べると二流校なんだよね。

 梟の波がきた。ドラコのワシミミズクが持ってきてくれたサンドイッチを有り難く受け取り、梟クッキーを二枚あげた。私のお墨付きの味なんだから味わって食べてね。


「いただきまーす!」


 かぶりつけば、今日の具はラムのカツレツだった。粒マスタードの大人しい辛さがちょっと物足りないかな。ふふ、しかし。そんなこともあろうかと!! 鞄を探って取り出しますは、オッペケペー(効果音)! からしチューブぅ! 日本で買ってきた! 今度日本に行く時はイカリのウスターソース買おうかな。それとも陽菜ちゃんに送ってもらうか……。日本とイギリスを往復する間に向こうの調味料はだいぶ買ったつもりだったけど、どうやらまだ足りなかったらしい。

 と、グリフィンドールの席からざわめきが消えた。吠えメールだ、という誰かの声が大きく響く。むしゃむしゃやってる二人はとりあえず、みんな耳を押さえた。

 そして響く爆音、怒鳴り声。


「車を盗み出すなんて、退校処分になってもあたりまえです。首を洗って待ってらっしゃい。承知しませんからね。車がなくなっているのを見て、わたしとお父さんがどんな思いだったか、おまえはちょっとでも考えたんですか……」


 ドラコは心底迷惑そうな顔だった。パンジーは馬鹿にしたように笑い、アメリアは耳を押さえながらもストローで南瓜ジュースを啜っている。クラッブ&ゴイルは耳を押さえて悶絶してた。

 やっとモリーおばさんの怒声が終わり、私は安心して食事に戻る。からしチューブを見たアメリアにジャパニーズマスタードって教えて、ちょっと舐めさせたら叩かれた。理不尽。

 遊びに来た羽毛にクッキーをあげて、食後の紅茶を楽しんでるみんなを待つ。今日は魔法薬学と変身術と薬草学だから教科書は魔法薬学と変身術だけで良いかな? 薬草学は二年になると教科書から離れて実践が多くなったはずだし、それに今日は薬草学最初の授業だから教科書を使わない――だろう、きっと。必要だったらアメリアかパンジーに見せてもらえば良いよね。

 食後のお茶が終わったみんなで一度寮に戻って、鞄に魔法薬学と変身術の教科書を鞄に詰めた。それと、ステッドラーさんの鉛筆と消しゴムそしてノート。だって、羽ペンも使い慣れない訳じゃないけど鉛筆とノートの利便性には劣るし。消しゴムという文明の利器を使わないのは人生がもったいないと思うんだよね。


「またえんぴつぅ?」

「うん。便利だよ、消して書き直せるし」

「魔法使えば良いじゃないのよ」

「わざわざ鉛筆から杖に持ち代えるの面倒だし、消しゴムのが早いもん」


 パンジーはつまらなそうに鼻を鳴らした。魔法で慣れているパンジーからすれば理解できないことなんだろう。でも私からすれば魔法で文字を消せると言っても、いちいち杖に持ち代えるのは面倒でしかないんだよね。杖を使わなくても魔法が使えるだろって突っ込みはなしの方向で。




+++++++++
 今回はここまで!
2012/04/07

- 62 -


[*pre] | [nex#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -