Star Dust






 日が過ぎるのは速く、今日は九月一日。ホグワーツ特急ではドラコやパンジーと一緒のコンパートメントに入る予定だったんだけど、この夏の間にさらに太ってむっちりとしたクラッブとゴイルのせいで女三人は正面のコンパートメントに入ることになった。


「あら、グレンジャーよ。何してるんだか」


 特急が走り出して二時間が過ぎただろうか、車内販売のおばさんが来た後、ハーマイオニーが泣きそうな顔でコンパートメントを一つ一つ確認していた。ハリーとロンを探してるんだろう、先にドラコ達のコンパートメントを見て顔をしかめている。


「ハイ、ハーマイオニー」

「あなた……レイノ」


 扉を開けて声をかければ、ハーマイオニーはくしゃりと顔を歪める。


「一体どうしたのさ、ハリー達と一緒じゃないの?」

「いないのよ……ハリーも、ロンも、見つからないの。もう二周もしてるのよ? もしかして二人とも乗り遅れたんじゃないかって、でもフレッドとジョージはハリー達は間に合ったはずだって言うし。私どうしたら、レイノ!」


 泣き出したハーマイオニーをなんて慰めるべきか。とりあえずコンパートメントの中に促して隣に座らせた。パンジーは一瞬嫌そうに顔をしかめたけど、ぐずぐずと泣いているハーマイオニーを見て、しばらく逡巡した後大声を上げた。


「ああもう、うざったいわね! メソメソしてるんじゃないわよ! ポッター達が見つからなかったなら乗り遅れたんでしょうよ、ポッターとウィーズリーがロングボトムよりもノロマだったってだけじゃないの! きっと先生方もあいつらを迎えにキングスクロス駅に行くわ。泣いてる暇があったら梟を貴方に飛ばしてないポッターに対して怒るのね!」


 パンジーは、驚いて顔を上げたハーマイオニーの頬を叩いた。かなり豪快だね!


「グリフィンドール生って泣き虫なのね」


 アメリアは暢気な態度でそう言った。


「ち、違うわ! 私は勇気のあるグリフィンドール生だもの!」

「なら何で泣いてるのかしら?」


 慌てて涙を拭いながら、ハーマイオニーは言い放った。


「これは涙じゃないわ、鼻水よ!」


 ハーマイオニーは目元をゴシゴシと擦りながら立ち上がり、小さく礼を言ってコンパートメントを出ていった。


「鼻水……」

「マグルって目から鼻水がでるのね」

「新しい幻獣かしら」


 ちなみに、今さっきのは二人にとって全くフォローのつもりはなかった。二人ともグリフィンドールが嘆きのマートルよりも嫌いだと公言してるくらいだし、特に純血としてのプライドが高いパンジーはマグル出身者を毛嫌いしてる。それなのに結果的に慰めることになったのは、ひとえに泣いてるハーマイオニーが邪魔だったからだろう。優しいんだか優しくないんだか。


「ところでレイノ、博愛主義もいい加減にしなさいよね! あんたが厚顔無恥なグリフィンドールにもノロマのハッフルパフにも優しい顔してるの見てると苛々するのよ」

「ゴメン……」

「謝れって言ってるんじゃないの、わかるでしょ!? 全くもう、あんたがあいつ等に甘い顔するから、あいつ等もつけあがるんじゃない」

「そうよ、レイノ。猿の躾は初めが肝心なの」


 パンジーに叱られて小さくなってる私に、アメリアまでも凄いことを言い出した。猿の躾ってお嬢さん、それは言い過ぎではございませんか。


「あー、グリフィンドール生もハッフルパフ生も同じ人類だよ?」

「ハァ? あれのどこが?」

「どうして?」


 まさか『どうして?』と聞かれるとは思いもしなかったよ!

 と、コンパートメントの扉が開いた。


「三人とも、百味ビーンズ食べ……どうしたんだ、雰囲気がおかしいが」

「何でもないわドラコ。有り難く頂くわねっ!」


 わざと指先を絡ませるように箱を受け取ったパンジーの思惑に気づくことなく、ピュアなドラちゃんは再びあのむさ苦しいコンパートメントに引っ込んだ。

 アメリアはパンジーが突き出した箱に手を入れて五つほどビーンズを取った。その中の一つを私の手に置く。


「あんまりこういった博打は好きじゃないんだけどなぁ」

「良いから食べなさいよ、ドラコがくれたものを無駄にする気?」

「パンジーマジ怖ぇ」


 口の中に放り込んだ緑色の小さな粒は山椒味で、瞬時に吐いたらパンジーに殴られた。小粒でもピリリと辛いんだから! 山椒単品はかなり舌が痛いんだからね!?



 セストラルの引く馬車に乗って学校へ着き、新一年生の組分けを見つつぼんやりとしてたら横からドラコにつつかれた。


「おい、レイノ。スネイプ教授はどうなさったんだ?」

「さあ……でも今朝は元気だったから、急用だと思うよ」


 なんだか喉が渇いたからゴブレットを覗き込んだけど、あいにく空だった。

 ウィーズリーのWを過ぎ残りはあと一人になった時、愛しのお父様が教員用出入り口から颯爽と現れた。それを見たドラコが安堵のため息を吐いた――ドラちゃんってばセブのこと尊敬してるもんね。セブがミネルバばーちゃんにボソボソと用件を伝えると、ばーちゃんの顔は般若の様になっちゃった。うわー、ありゃハリーたち死ぬな。間違いなく殺されるわ。

 最後に残った一人、コレット・ヤングがばーちゃんの顔を至近距離で見ちゃったせいで腰が抜けて立ち上がれず、組分けされたハッフルパフの監督生が迎えに行くというアクシデントが起きた。でもまあ、セブに連れられてばーちゃんが広間から出てった後は平和な食事が始まった。後から聞いた話によるとコレットちゃんはその監督生とお付き合いを始めたらしい。吊り橋効果だろうか?


+++++++++
 近くで見たらちびるマクゴナガルの鬼面
2012/04/07

- 61 -


[*pre] | [nex#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -