Star Dust






 ハリーはアーサーおじさんに腕を引かれながら嘆いているフレッドとジョージにおずおずと訊ねた。


「二人は――アー、小早川教授を知ってるの?」


 ハリーにとって小早川教授とは去年折に触れ顔を合わせただけの間柄だが、二人にとって彼女は特別な存在であるように見えた。


「当然さ! 悪戯専門店に行けば誰だって彼女の素晴らしさが分かるってもんだよ。彼女の作った悪戯グッズは効果もピカイチなんだ」

「そのくせ値段はお手頃とくるから、悪戯好きには神様みたいなもんさ!」


 毛がぬけ〜るシリーズとか歯抜けクッキーとかいっぱいあるんだと目を輝かせる二人。我が事のように自慢する双子にモリーおばさんはため息を吐いている。


「素晴らしい人なのよ。脱狼薬を完成させたり、不治の病とされていた病気の薬をいくつも開発してきた伝説の人なの……でも、性格がね。ちょっと普通じゃないと言うか」


 例のあの人とも唯一対等に渡り合えたそうよ、とおばさんは声を落とした。


「スゲー、そうだったんだ!?」

「小早川教授とも親しい知り合いっていないの、ママ? いたら紹介して!」


 ハリーは双子がこんなに興奮するくらいだから、よほどあの小早川教授の悪戯グッズは凄いのだろうと思った。だがハーマイオニーは後ろの方でロンを捕まえて小早川教授の晴れやかな功績についてとうとうと語っている。天才となんとかは紙一重という言葉がハリーの頭に浮かんだ。


「いるにはいるわよ。でも私が連絡しなくても、貴方達はすぐに彼に会いに行けるわ」

「誰、誰?」

「スネイプ教授よ」


 とたん、フレッドとジョージはうげっと踏まれた蛙みたいな声を出した。二人ともスネイプに悪戯ばっかりしてるから、小早川教授につなぎをつけてもらえるとは思ってないんだろう。考えるのも嫌だけど、もし僕がスネイプの立場なら絶対紹介しないし。


「あのお堅い教授が、あの素晴らしい小早川大先生の弟子だなんてっ!」

「信じられない、ううん、信じたくない!」


 嘆く二人に対し、アーサーおじさんは困ったように微笑みながら言った。


「小早川教授が特に目をかけたのがスネイプ教授なんだよ。入学してすぐにメキメキと頭角を現して、当時は『落ち着いている小早川ジュニア』と言われていたくらいさ」


 たった数回しか会ったことはないけど、天真爛漫で奔放な小早川教授。あの人の弟子がスネイプ……信じられないや。

 後ろでくどくどと小早川教授の功績について解説しているハーマイオニーの声を聞きながら、今度彼女に会えるのはいつだろうかと思った。




 夏休みのほとんどは陽菜ちゃんと正輝くんのところへ遊びに行くことで消費した。セブは私に友達ができたんだと思ってるみたいだけど、時差九時間の友人だとは思いもしないだろう。案外厳しい神楽舞の練習とかGHQが日本の占領後に潰そうとした三つの神社巡りとか(靖国・湊川・四条畷。結果的にどれも潰れなかったけど潰されかけた。靖国は言わずもがな、湊川と四条畷は特攻隊の標語が「今楠公になろう」だったから。湊川神社は楠木正成を奉った神社で、四条畷が奉ってるのはその息子)、柏手の打ち方講座に注連縄結界のいろは、神道系の魔術に関する講義を詰め込まれた。


「だいたい、神道信者だからっていって右翼と一緒にされるのはおかしいと思うのよね」

「は、はぁ……」


 陽菜ちゃんはプリプリと怒りながらそう言った。区別が付かなくてごめんなさい。


「それを言うなら敬虔なキリシタンも右翼ってことになるわ。そうでしょ? だって国教を深く信仰しているという点では変わらないはずだわ」

「はい、うん」


 陽菜ちゃんは右翼ではないらしい――左翼でもないそうだけど。どちらかというと胴体よと胸を張って言われた。胴体ってなんじゃらほい。


「あのね、宗教って大事なのよ、鈴緒ちゃん。その宗教が生まれた理由は必ずあるの。日本人のっていうか、私の感性に一番合ってるのが神道だと私は思うから神道を信仰してるのよ」


 明良は最近の若者らしく無神論者だけどねと言う陽菜ちゃん。宗教って奥が深いんだなぁ、初めて知ったよ。スピナーズエンドの教会とか一度として行ったことないし、ホグワーツに宗教の時間なんてないし。


「信仰は頭でするものじゃないの、心から湧き上がるものなのよ」


 その言葉が何故か、ドスンと胸を突いた気がした。




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 短いw
2012/04/07

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