Star Dust






 PQRS、だから私はハリーの少し後だ。懐かしさしか感じない星の天井を見上げながら真ん中の通路を歩けば強い視線を感じた。顔を上げ――誰かと思えばジジイだった。何度もウィンクしてきて、はっきり言ってウザい。組み分け帽子の横からミネルバばーちゃんが睨みつけているものの、フリーダム過ぎるジジイは気にせずウィンクと投げキッスまで飛ばし始めた。セブが親の敵を見るような目を向けているのに気付かないんだろうか?

 ハリーがだいぶん長いこと帽子と話し込んでるから暇で暇で、ジジイを無視して教師席のセブを見つめる。

 セブは私と目が合うと薄く笑った。てか、これが笑ってる範囲内だってわかるのは私くらいじゃなかろうか。満面の笑みを返す。セブ、二十年ぶりー。


「グリフィンドール!」


 帽子が叫んだ。知識として知っている私からすれば当然の結果だけど、知らない彼らからすればうれしい結果だ。グリフィンドールが湧いている。


「スネイプ・レイノ!」


 何人か間に挟み、私の番がやってきた。騒がしさを引きずる広間がシンと静まった。そして波打つ囁き声。曰く、あの陰険教授って結婚してたんだ、娘だ……と!?、子持ちだなんて想像できないうんたらくんたら。否定できないのが辛いねははっは! だってセブの妻の座は私のものだから!


「こんばんは、組み分け帽子」


 私は閉心術が大の得意だ。なぜって、セブルスが一番に教えてくれたのが閉心術だったから。何子供に変な術教えてんだ、って突っ込みはナシの方向で。


「おやおや、君の中は全く見えないね。でも微かに分かる……君はそう、ここだ――スリザリン!」


 セブを振り返れば、他の人も分かるほどの笑みで手を叩いていた。セブってばよっぽど嬉しいんだね。しグリフィンドールに組み分けられても親子なのは変わらないけど、前の時もスリザリンだったからグリフィンドールに行く可能性はゼロだってことは分ってた。ハリーがどこか寂しそうに――まるでチワワみたいに見つめてくるのは無視し、私は愛するデコの元へと駆けた。






 夕食は肉かポテト、そして野菜。昼間に食った卵サンドが懐かしく感じられる……。湯気を上げているのは料理の中でもごく一部で、ほとんどは冷めてぬるいものばっかりだ。その中からなるべく油脂の少ない茹で野菜とかを選んで食べるんだけど、温かいのは肉とスープくらいだからほとんどぬるい料理ばかりしか口に出来ないことになる。懐かしい味といえば懐かしい味だけどまた七年間食べ続けるのかと思うと憂鬱だわ。ソースの味が濃いせいで胸焼けがする。なるべくソース落としてるのにどうしてだ。


「どうしたんだい、レイノ? 全然肉を取っていないじゃないか」

「いや、食欲がなくて……」


 無いというよか、失せる。宣誓、私はこれから七年間、校内では野菜だけを食べて生きていきます。

 ドラコの皿には肉がこんもりとのってるけど、真似できんわー……。そういやヴォルディーも平気で食ってたな。外人の胃袋はどうなっとるんだ。


「それは駄目だ。少しは食べないと元気が出ないぞ、ホラ」


 そう言ってドラコは私の取り皿に肉を数切れ乗せた。ドラコォォォォォォなんてことをぉぉぉ!!――苛め、新手の苛めなの!? いや、親切だって分かってるよ。でも食えないもんは食えないんだよ! 味が濃いんだよ食べらんないんだよ!


「あー、有難う、ドラコ」

「どういたしまして」


 昼の卵サンドに増して私はもそもそと夕食を摂った。ドラコが親身になって心配してくれるもんだから、お前のせいだとは言えなかった。私は空気を読めるうえ人の気遣いに気付ける女の子だから。

 ついでにクラッブやゴイルは視界から削除している。あいつらを見たらリバースしちゃいそうだ。

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